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【事件名】心理占いソフトの著作権侵害事件
【年月日】平成11年12月1日
 東京地裁 平成11年(ワ)第20866号 著作物複製禁止等請求事件
 (口頭弁論終結日 平成11年11月15日)

判決
原告 株式会社のらコミニケーシヨン
右代表者代表取締役 前田知則
右訴訟代理人弁護士 太田昇
右 同 三木敬裕
被告 株式会社ノア
右代表者代表取締役 弦本理
右訴訟代理人弁護士 工藤裕之


主文
一 本件訴えのうち、原告の請求一、二に係る部分を却下する。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は原告の負担とする。

理由
第一 原告の請求
一 被告は、別紙物件目録記載のCD−ROMを製造、販売、頒布したり、コンピュータ及びプリンタを用いて右CD−ROMに収録された説明文を印刷した文書を発行、販売、頒布してはならず、また、表題のいかんを問わず右CD−ROMに収録された説明文と同一ないし類似の説明文を掲載した書籍を印刷、販売、頒布してはならない。
二 被告は、その所有する別紙物件目録記載のCD−ROMを廃棄せよ。
三 被告は原告に対し、株式会社朝日新聞社東京本社発行の朝日新聞の全国版朝刊社会面に、別紙謝罪広告目録の「一 体裁」の項記載のとおりの体裁で、同目録の「二 広告文」の項記載のとおりの広告を、一回掲載せよ。
第二 事案の概要
 本件は、原告が、その名義で公表したCD−ROM(以下「原告CD−ROM」という。)内に収録された原告の著作に係る占い説明文(以下「原告占い説明文」という。)を、被告が無断で用いて別紙物件目録記載のCD−ROM(以下「被告CD−ROM」という。)を制作したとして、被告に対し、被告CD−ROMの製造等の禁止、同CD−ROM内に収納された占い説明文(以下「被告占い説明文」という。)を掲載した文書、書籍の発行等の禁止及び謝罪広告を請求した事案である。
第三 当裁判所の判断
一 本件訴えのうち、請求一に係る部分について
 平成九年(ワ)第二六〇〇六号著作権侵害差止等請求事件(以下「平成九年事件」という。)において、原告は、平成一〇年一二月一六日付けで、請求の趣旨及び原因を変更する旨の準備書面を当裁判所に提出し、右同日、その副本が被告代理人に送達された。右準備書面によれば、原告は、被告に対し、原告CD−ROM内に収録された原告占い説明文等に係る原告の著作権に基づき、被告CD−ROMの製造等の禁止、同CD−ROM内に収納された被告占い説明文を掲載した文書、書籍の発行、頒布等の禁止を請求していることが明らかである(裁判所に顕著な事実)。
 そうとすると、本件訴えのうち原告の請求一に係る部分(そのすべて)は、平成九年事件に係る請求と、請求の趣旨。請求の原因及び当事者が共通することになり、原告は、同一の請求につき、重ねて訴えを提起したことになる。
 したがって、本件訴えのうち原告の請求一に係る部分は、二重起訴に当たる不適法な訴えとして、却下されるべきことになる。
(もっとも、平成九年事件において、右訴えの変更に係る準備書面は、口頭弁論期日等に未だ陳述されていない。しかし、その変更に係る訴えは、被告に送達されると同時に、当事者間においても訴訟係属があったものと解すべきであるから、原告は、同一の請求につき、二重に訴えを提起したとの判断を左右するものとはいえない。のみならず、平成九年事件においては、当初、訴訟の対象が必ずしも明らかでなかったが、裁判所の訴訟指揮により、ようやく、前記のとおり、訴訟の対象を明確にすることができたところ、原告は、明確になるや否や、これと同一の請求を別訴により提起したものであり、このような訴訟進行の経緯に照らしても、本件訴えを許すことは、相当でないというべきである。)。
二 本件訴えのうち、原告の請求二に係る部分について
 著作権法は、著作権者等は、著作権侵害の停止ないし予防の請求をするに際して、侵害行為を組成した物等の廃棄、その他必要な措置を求めることができる旨規定する(同法一一二条二項)。右規定から明らかなとおり、著作権者等は、廃棄請求権のみを独立して行使することは許されない。ところで、前記のとおり、本件訴えのうち、原告の請求一に係る部分は不適法であるから、本件訴えのうち、原告の請求二に係る部分も不適法な訴えと解するのが相当であり却下されるべきこととなる。
三 原告の請求三(謝罪広告の請求)について
 原告は、原告占い説明文を複製し、被告が著作者であるかのように表示する被告の行為は、原告占い説明文に係る著作者人格権(氏名表示権)を侵害し、これにより、営業上の信用を害されたため、原告の名誉声望を回復することが必要であると主張して、謝罪広告を請求する。
 しかし、原告の主張に係る事実を前提としても、以下のとおり、謝罪広告を認める必要性はないと解される。すなわち、@被告CD−ROMの制作行為及び被告占い説明文を印刷した書籍の発行行為の態様に照らすと、被告の行為と原告とを結びつけて理解する者は、必ずしも多いとは考えられず、被告の行為により、直ちに、原告の名誉声望が害されるとは解しがたいこと、A被告占い説明文の内容は、比較的ありふれた表現形態からなり、内容に照らしても、原告の名誉声望が大きく害されると解することはできないこと、B仮に、原告の名誉声望が毀損されることがあり得るとしても、その損害については、金銭賠償により回復することが可能であること等の諸事情を総合考慮すると、本件においては、謝罪広告を認める必要性はないというべきである。したがって、原告の請求三は、理由がない。
四 結論
 よって主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第29部
 裁判長裁判官 飯村敏明
 裁判官 沖中康人
 裁判官 石村智


物件目録
 別紙Bの1ないし120表示の図柄並びに別紙Dの1ないし120表示の文章を収録した債務者作成名義の「個性心理學システム」なる題名のCD−ROM

謝罪広告目録
一 体裁
1 スペース
 二段抜き左右一〇センチメートル
2 使用文字
 「謝罪広告」との見出し 二〇級ゴシック
 本文及び日付け 一六級明朝体
 被告名及び宛名の原告名 一八級明朝体
二 広告文(ただし、日付は広告掲載の日とする)
 謝罪広告
 当社が製作し、かつ、販売、頒布した「個性心理學システム」なる題名のCD−ROMに収録された文章のうち「あなたの本質」なる部分の文章は、貴社が著作した「個性心理學」なる題名のCD−ROMに収録された文章を無断で模倣、改変して利用したものでした。
 これにより、貴社の著作権、著作者人格権を侵害し、貴社に多大のご迷惑をおかけしたことをここにお詫びするとともに、今後再びこのような行為を行わないことを誓います。
平成 年 月 日
<住所略>
 株式会社ノア
 代表取締役 弦本理
<住所略>
 株式会社のら
 代表取締役 前田知則殿
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日本ユニ著作権センター
http://jucc.sakura.ne.jp/