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【事件名】エアガンの模倣品事件(2) 【年月日】平成14年1月31日 東京高裁 平成11年(ネ)第1759号 不正競争行為差止請求控訴事件 (原審・東京地裁平成8年(ワ)第19445号) (平成13年11月8日 口頭弁論終結) 判決 控訴人 株式会社ウエスタン・アームス 訴訟代理人弁護士 宗万秀和 同 川合順子 同 荒木和男 同 近藤良紹 同 早野貴文 同 牧野利秋 同 高橋隆二 同 鬼頭栄美子 被控訴人 株式会社アングス精機販売 被控訴人 有限会社ホビーショップフロンティア 両名訴訟代理人弁護士 河野玄逸 同 川村英二 同 曽我幸男 被控訴人 株式会社三ツ星商店 訴訟代理人弁護士 美村貞夫 同 美村貞直 被控訴人 CAROM SHOTこと A 訴訟代理人弁護士 浅井正 訴訟復代理人弁護士 古田啓昌 被控訴人 株式会社シェリフ 訴訟代理人弁護士 中島健仁 同 渡辺徹 同 八代紀彦 同 佐伯照道 同 天野勝介 同 森本宏 同 山本健司 同 滝口広子 同 児玉実史 同 生沼寿彦 同 飯島歩 同 中森亘 同 小瀧あや 同 奥田孝雄 同 町田行功 同 末永久大 同 敷地健康 同 根木智子 同 礒川剛志 主文 原判決を次のとおりに変更する。 1 被控訴人株式会社アングス精機販売は、控訴人に対し、74万4237円及び内金64万4237円に対する平成9年4月19日から支払済みまで、内金10万円に対する平成13年1月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被控訴人有限会社ホビーショップフロンティアは、控訴人に対し、82万7977円及び内金72万7977円に対する平成9年4月19日から支払済みまで、内金10万円に対する平成13年1月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被控訴人株式会社三ツ星商店は、控訴人に対し、531万2000円及び内金481万2000円に対する平成9年4月19日から支払済みまで、内金50万円に対する平成13年1月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被控訴人CAROM SHOTことAは、控訴人に対し、194万円及び内金174万円に対する平成9年4月19日から支払済みまで、内金20万円に対する平成13年1月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被控訴人株式会社シェリフは、控訴人に対し、258万0441円及び内金228万0441円に対する平成9年4月19日から支払済みまで、内金30万円に対する平成13年1月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 控訴人のその余の請求をいずれも棄却する。 7 訴訟費用は、第1、2審を通じて、 (1) 控訴人と被控訴人株式会社アングス精機販売との間においては、控訴人に生じた費用の50分の1及び同被控訴人に生じた費用の10分の1を同被控訴人の負担とし、その余を控訴人の負担とし、 (2) 控訴人と被控訴人有限会社ホビーショップフロンティアとの間においては、控訴人に生じた費用の50分の1及び同被控訴人に生じた費用の10分の1を同被控訴人の負担とし、その余を控訴人の負担とし、 (3) 控訴人と被控訴人株式会社三ツ星商店との間においては、控訴人に生じた費用の25分の3及び同被控訴人に生じた費用の5分の3を同被控訴人の負担とし、その余を控訴人の負担とし、 (4) 控訴人と被控訴人CAROM SHOTことAとの間においては、控訴人に生じた費用の25分の1及び同被控訴人に生じた費用の5分の1を同被控訴人の負担とし、その余を控訴人の負担とし、 (5) 控訴人と被控訴人株式会社シェリフとの間においては、控訴人に生じた費用の50分の1及び同被控訴人に生じた費用の10分の1を同被控訴人の負担とし、その余を控訴人の負担とする。 8 この判決は、第1項ないし第5項に限り仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人 原判決を取り消す。 (1) 被控訴人株式会社アングス精機販売(以下「被控訴人アングス」という。)は、控訴人に対し、771万5990円及び内金701万4990円に対する平成9年4月19日から支払済みまで、内金70万1000円に対する平成13年1月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 被控訴人有限会社ホビーショップフロンティア(以下「被控訴人フロンティア」という。)は、控訴人に対し、738万6720円及び内金671万5200円に対する平成9年4月19日から支払済みまで、内金67万1520円に対する平成13年1月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 被控訴人株式会社三ツ星商店(以下「被控訴人三ツ星商店」という。)は、控訴人に対し、682万4400円及び内金620万4000円に対する平成9年4月19日から支払済みまで、内金62万0400円に対する平成13年1月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (4) 被控訴人CAROM SHOTことA(以下「被控訴人A」という。)は、控訴人に対し、987万8000円及び内金898万円に対する平成9年4月19日から支払済みまで、内金89万8000円に対する平成13年1月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (5) 被控訴人株式会社シェリフ(以下「被控訴人シェリフ」という。)は、控訴人に対し、3315万4000円及び内金3014万円に対する平成9年4月19日から支払済みまで、内金301万4000円に対する平成13年1月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (6) 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人らの負担とする。 (7) 仮執行の宣言 2 被控訴人ら 控訴人の請求をいずれも棄却する。 第2審の訴訟費用は控訴人の負担とする。 第2 当事者の主張 本件は、エアソフトガン又はエアガン(以下「エアソフトガン」という。)を製造販売するとともに、その部品をも商品として製造販売している控訴人が、被控訴人らに対し、被控訴人らの販売する商品は控訴人の部品の形態を模倣したものであり、被控訴人らの行為は不正競争防止法(以下、単に「法」という。)2条1項3号に該当すると主張して、損害賠償金(被控訴人らの得た利益相当額)及びこれに対する民法所定の遅延損害金の支払を求めた事案の控訴審である。控訴人は、当審において、被控訴人アングスに対する2116万6200円の請求の額を771万5990円(利益相当額701万4990円、弁護士費用70万1000円)に減縮し、被控訴人フロンティアに対する671万5200円の請求の額を、738万6720円(利益相当額805万8240円のうちの671万5200円、弁護士費用80万5000円のうちの67万1520円)に拡張し、被控訴人三ツ星商店に対する620万4000円の請求の額を、682万4400円(利益相当額620万4000円、弁護士費用62万0400円)に拡張し、被控訴人Aに対する898万円の請求の額を、987万8000円(利益相当額1212万3000円のうちの898万円、弁護士費用121万2000円のうちの89万8000円)に拡張し、被控訴人シェリフに対する3014万円の請求の額を、3315万4000円(利益相当額3988万2078円のうちの3014万円、弁護士費用398万8000円のうちの301万4000円)に拡張した。 当事者の主張は、次のとおり付加するほか、原判決の「事実及び理由」の「第二 事案の概要」の一1、4及び二1ないし6記載のとおりであるから、これを引用する。 なお、原判決中に、「別紙二「物件目録」の表一の@ないしF」とあるのを「別紙控訴人商品目録の@ないしF」と、「別紙二「物件目録」の表二の@ないしH」とあるのを「別紙アングス商品目録の1ないし9」と、「別紙二「物件目録」の表三の@ないしG」とあるのを「別紙フロンティア商品目録A」(主位的請求)、「別紙フロンティア商品目録B」(予備的請求)の1ないし8と、「別紙二「物件目録」の表四の@ないしG」とあるのを「別紙三ツ星商品目録の1ないし8」と、「別紙二「物件目録」の表五の@ないしB」とあるのを「別紙A商品目録A」(主位的請求)、「別紙A商品目録B」(予備的請求)の1ないし3と、「別紙二「物件目録」の表六の@ないしJ」とあるのを「別紙シェリフ商品目録A」(主位的請求),「別紙シェリフ商品目録B」(予備的請求)の1ないし11と、それぞれ読み替え、また、「原告遊戯銃」とあるのを「控訴人エアソフトガン」と、「被告アングス商品」、「被告フロンティア商品」、「被告三ツ星商品」、「被告A商品」、「被告シェリフ商品」とあるのを、「アングス商品」、「フロンティア商品」、「三ツ星商品」、「A商品」、「シェリフ商品」と、それぞれ読み替える。 1 基礎となる事実(当事者間に争いのない事実) (1) 控訴人の商品 控訴人は、平成6年9月22日から、別紙控訴人商品目録の@ないしF記載の各商品(以下、順に「控訴人フレーム」、「控訴人スライド」、「控訴人アウターバレル」、「控訴人チェンバーカバー」、「控訴人シアー」、「控訴人ハンマー」、「控訴人フローティングバルブ」といい、これらを「控訴人商品」と総称することがある。)を販売している。上記商品は、控訴人販売に係る、商品名を「コルト・ガバメント・ブローバック・モデル」というエアソフトガン(以下「控訴人エアソフトガン」という。)に対応した交換用の部品(以下「カスタムパーツ」という。)である。 (2) 被控訴人らの商品 (ア) 被控訴人アングスは、別紙アングス商品目録1ないし9記載の各商品(以下順に「アングス商品1」・・・「アングス商品9」という。)を販売していた。 アングス商品1及び2は、控訴人フレームのカスタムパーツ、アングス商品3ないし5は、控訴人スライドのカスタムパーツ、アングス商品6ないし8は、控訴人チェンバーカバーのカスタムパーツ、アングス商品9は、控訴人シアーのカスタムパーツであり、いずれも、それぞれに対応する控訴人商品と交換して、控訴人エアソフトガンに組み込むことができるものである。 (イ) 被控訴人フロンティアは、別紙フロンティア商品目録A(ないしはB)の1ないし8記載の各商品を販売していた。 フロンティア商品1ないし3は、控訴人スライドのカスタムパーツ、フロンティア商品4は、控訴人アウターバレルのカスタムパーツ、フロンティア商品5及び6は、控訴人チェンバーカバーのカスタムパーツ、フロンティア商品7は、控訴人シアーのカスタムパーツ、フロンティア商品8は、控訴人ハンマーのカスタムパーツであり、いずれも、それぞれに対応する控訴人商品と交換して、控訴人エアソフトガンに組み込むことができるものである。 (ウ) 被控訴人三ツ星商店は、別紙三ツ星商品目録の1ないし8記載の各商品を販売していた。 三ツ星商品1ないし3は、控訴人スライドのカスタムパーツ、三ツ星商品4は、控訴人アウターバレルのカスタムパーツ、三ツ星商品5及び6は、控訴人チェンバーカバーのカスタムパーツ、三ツ星商品7は、控訴人シアーのカスタムパーツ、三ツ星商品8は、控訴人ハンマーのカスタムパーツであり、いずれも、それぞれに対応する控訴人商品と交換して、控訴人エアソフトガンに組み込むことができるものである。 (エ) 被控訴人Aは、別紙A商品目録A(ないしはB)の1ないし3記載の各商品を販売していた。 A商品1は、控訴人シアーのカスタムパーツ、A商品2及び3は、控訴人ハンマーのカスタムパーツであり、いずれも、それぞれに対応する控訴人商品と交換して、控訴人エアソフトガンに組み込むことができるものである。 (オ) 被控訴人シェリフは、別紙シェリフ商品目録A(ないしはB)の1ないし6、8ないし11記載の各商品を販売していた。 シェリフ商品1ないし4は、控訴人アウターバレルのカスタムパーツ、シェリフ商品5及び6は、控訴人チェンバーカバーのカスタムパーツ、シェリフ商品8ないし10は、控訴人ハンマーのカスタムパーツ、シェリフ商品11は、控訴人フローティングバルブのカスタムパーツであり、いずれも、それぞれに対応する控訴人商品と交換して、控訴人エアソフトガンに組み込むことができるものである。 2 当審における控訴人の主張の要点 (1) 控訴人エアソフトガンの部品の形態が法2条1項3号にいう「同種商品が通常有する形態」に該当するかについて (ア) 法2条1項3号が「同種商品が通常有する形態」を保護の対象から除外しているのは、同種の商品分野における一般的な形態ないしありふれた形態は、先行投資の対象とされるものではなく、何人も自由に利用できる形態として特定の者に独占させないことが適当であるので、たとい3年の短期とはいえ保護の対象とすることは好ましくないことから、これを除外することとしたものである。また、他者に先駆けて開発した新しい種類の商品であるため、同種の商品が市場に存在しない場合には、その機能及び効用が同一又は類似の商品があれば、これをその商品と「同種商品」とみて、その通常有する形態を同法2条1項3号の保護対象から除外することを定めている。したがって、法2条1項3号が保護の対象から除外している形態は、同種の商品又は機能及び効用が同一又は類似の商品が通常有する商品形態に限られるのであり、商品形態が機能・効用と結びついているからといって直ちに保護対象から除外されることになるわけのものではない。その上、同種の商品又は機能及び効用が同一又は類似の商品がない場合には、通常有する形態という観念はそもそも存在しないのであるから、その商品の有する形態が同法2条1項3号の保護対象となることは、当然である。その場合に、部品(独立の商品としての部品)であっても、法2条1項3号による形態保護を受け得ることは、異論を見ないところである。 ところが、上記部品が「交換用の部品」である場合に、にわかに、交換部品市場保護の論理を持ち出し、当該部品がその構成の一部として組み込まれる商品(以下「本体」という。)に組み込まれるために不可避的に採らざるを得ない形態であるということを理由に、当該部品が「同種の商品が通常有する形態」に当たるとすることは、法2条1項3号の立法趣旨を無にし、部品(独立の商品としての部品)の形態保護自体を一般的に否定するのに等しい。そのようなことが許されるのは、パブリックドメインを確保する明確な政策的要請があり、それが製造者の開発努力を凌駕する価値が認められるような場面に限られるべきである。 仮に、本体に組み込まれるために必要不可避な部品の形態を一切保護しないとすれば、当該部品の形態を模倣することが実質的に自由となり、そのような部品を集めて組み合わせることによって本体を製造することもまた、自由となって、本体の形態を保護しないという不可解な結果となるのである。 (イ) 個々の部品の形態は、当該商品の機能、強度、生産性、美観等の様々な観点から検討され、試行錯誤を繰り返した後に生み出されるものであって、部品の形態も、本体の形態と同様に、企業努力の結晶である。そもそも、本体は、複数の部品が組み合わされた総体であり、部品の組合せは、相互に関連しているものである。例えば、部品Aと部品Bの組合せを考えるに当たって、開発の工夫は、AB両方の部品の形態に結実しているのであり、そのような創意工夫の集大成が本体となるのであるから、Aの形態が決定されるとBの形態は一義的に決まるというようなものではない。 したがって、開発の工夫の結実である個々の部品の形態は、通常有する形態ではない。 交換部品市場が存在し、本体に組み込まれる部品と同一の形態の部品を、製造者・販売者等が修理等の目的のために別個に独立した商品として販売したり(純正部品)、第三者が互換性を有する独立した部品として販売したり(以下、同部品を「互換性部品」という。)する場合があることは、事実である。しかし、そうであるとしても、だからといって、本体に組み込まれる部品の有する形態は、そもそも同法2条1項3号の保護対象とならない、とするような解釈が、市場保護を理由として許されることになるわけではない。 (ウ) 独立の商品である部品の技術的機能に着目して、直ちに、同部品が「通常有する形態」に当たるとするのは、誤りである。 法2条1項3号は、不法行為の一態様を類型化した規定であって、先行者の成果にただ乗りする不法性に着目して立法化され、保護期間が3年間と極めて短い期間であることを考慮すれば、商品の有する機能・効用と商品形態が不可避的に結びつく場合においても、当該商品形態の保護を認めるべきである。そして、このことは、独立の商品としての部品についてもいえることである。 仮に、部品(独立の商品としての部品)が「通常有する形態」に当たるかどうかを検討する上で、その技術的機能が考慮されるとしても、当該部品に本来の用途として期待される機能・効用の検討をすべきであり、当該部品が特定の本体に組み込まれるということをもって当該部品の機能・効用であるとすることはできない。 部品の形態と技術的機能とについてみると、部品の形態は、部品本来の技術的機能を発揮するために採用せざるを得ない基本的(機能的)形態と、それ以外の形態(他に採り得る形態)から成るものである。後者の「他に採り得る形態」は、製造者の創意工夫によりさまざまな形態が考えられ、共通の形態的特徴を有しつつも、具体的形状は、各社の各商品によって大きく異なる。例えば、部品が本体に組み込まれるためにとる寸法等の具体的形状は、部品本来の技術的機能により必然的に定まるものではなく、製造者が本体を構成する他の部品との接続性等を考慮した上それぞれ決定するものであり、当該部品の技術的機能に由来する形態ではない。 部品(独立の商品としての部品)が、互換性保持のため一定の形態をとることが必要であるとしても、上述したところに照らせば、当該商品の性質上その形態が一義的に決まることになるものではないのである。 (エ) 交換部品市場における自由競争の保護の要請があるにしても、自由競争の保護と不正な商品形態からの保護とのバランスは、部品市場の具体的な市場構造、性質に応じて判断されなければならないのであり、企業努力を払った結果生み出された各部品の基本的形態の保護そのものが否定されるべきではない。 確かに、他人の商品に組み込む部品を製造しようとする者にとっては、組込みの必要上、当該他人の部品(独立の商品としての部品)の基本的形態を踏襲せざるを得ない場合が多いであろう。その意味においては、互換性部品を製造する者にとっては、「その形態が一義的に決まり」「他に選択肢がない」ともいい得るであろう。 しかしながら、本件において、控訴人エアソフトガンの部品は、本体と一体的に設計・製造されていることにより、その形状・寸法等の基本的形態において、他の部品にはない独特の形態を有しているものである。すなわち、エアソフトガンの玩具としての動作が行われるべく部品同士を適正に組み合わせるように設計することに、最大の企業努力がなされているものであり、控訴人エアソフトガンを構成する各部品の基本的形態自体に特徴があるのである。控訴人エアソフトガンは、各種部品の組合せにより構成されており、その各種部品は、本体商品を構成するものとして一体として設計・製造されている。その各種部品の多くは、控訴人エアソフトガンのみに適合できる形態を有し、それ以外のエアソフトガンの部品としての汎用性はない。ましてや、その形状、寸法がエアソフトガンの部品としてデファクトスタンダード(事実上の基準)になっているものでもない。 (オ) 控訴人エアソフトガンを構成する各部品である控訴人商品の形態は、いずれも、法1条1項3号にいう「同種商品が通常有する形態」に当たらない。 控訴人エアソフトガンにおいては、バレル部分をプラスチック弾を通すインナーバレルアッセンブリーとその外側部分であるアウターバレルアッセンブリーとに分ける構成が採用されている(別紙バレル構造図@、A参照)。このようにバレル部分を分ける構成自体は従来のエアソフトガンにも例があるとはいえ、控訴人エアソフトガンは、プラスチック弾がそこから発射されるインナーバレルアッセンブリーは固定されたまま、外側のアウターバレルアッセンブリーのみが前後動する点に技術的な特徴を有している。そして、控訴人エアソフトガンにおけるアウターバレルアッセンブリーは、それを更にアウターバレルとチェンバーカバーに分断して二つの部品構成とし、それぞれの形状、寸法を独自に開発したのである。アウターバレルの部品としての本来の技術的機能から来る形態は、内部にインナーバレルを収納することから要請される、パイプ状という形状のみである。したがって、控訴人アウターバレルが同種の商品形態の通常有する形態として有するものは、パイプ状であること、その一端にチェンバーカバーと接続するための接続手段を有すること以外にはない。 控訴人チェンバーカバーの、技術的要請から不可避な商品形態上の形状は、アウターバレルを接合するための接続手段を有する形状以外にはない。 控訴人ハンマーは、その基本的形態には、実銃のハンマーの形態と共通するものがあるものの、リバウンドロックノッチを設けた点とノッチ幅が半分であることに形態的特徴がある(別紙被控訴人ハンマー説明図参照)。ハンマーの形状には他に採り得る形状があり、上記形態は、技術的に不可避な形態ではない。 控訴人フローティングバルブは、控訴人が全く新たに創出した部品であって、エアソフトガンにおいて、同種の商品もなければ、機能・効用が類似する商品もない。したがって、通常有する商品形態を観念する余地はない。控訴人のフローティングバルブの基本的形態は、細長い三枚羽根状部分と先端がすぼまった同筒状部分とが、ゴム製の円盤状部分を挟んで接合されている形状にある(別紙控訴人フローティングバルブ説明図参照)。この基本的形態はありふれた形状でもなければ、フローティングバルブの機能を発揮するために不可避な形状でもない。 その他、控訴人フレーム、同スライド、同シアーについても、それらの形態は、いずれも、「同種商品が通常有する形態」に当たらない。 (2) 被控訴人らの商品の形態が控訴人商品の形態を模倣したものか否かについて (ア) 控訴人アウターバレルの上記通常有する形態を除いて、控訴人のアウターバレルの商品形態と被控訴人らのアウターバレルの商品形態とを対比すると、控訴人アウターバレルの商品形態の基本的特徴は、外形寸法、接合部内径の雌ネジ、その近傍の切欠き部であり、これらの点において被控訴人らのアウターバレルと相違がない。その余の相違点の印象は希薄であり、両者の形態は実質的に同一である。 (イ) 控訴人チェンバーカバーの上記技術的要請に基づく形態を除いて、控訴人のチェンバーカバーの商品形態と被控訴人らのチェンバーカバーの商品形態とを対比すると、両者において基本的形状に相違点はなく、被控訴人らのチェンバーカバーは、@商品の側面に楕円形の小窓を開けていること、Aネジ部形状の断面において、控訴人チェンバーカバーが略円形であるのに対し、円形であること、Bネジ部の長さが0.8mm長く、脚部の長さが0.5mm短いことの3点が相違するのみである。このような相違点は、全体の形態の中では印象が弱く、大きさの違いもわずかであること、細部の相違点であることから、両者の形態は酷似しているということができる。 (ウ) 被控訴人らのハンマーは、1種ではなく3種あるものの(スパーハンマー、スパーWハンマー、ショートスパーハンマー)、その形状は、いずれも、控訴人ハンマーの形状的特徴である上記2点(リバウンドロックノッチを設けた点とノッチ幅が半分であること)の形状を有している。被控訴人らのスパーハンマーは、圧力ピンがない点を除き他の形状は控訴人ハンマーのものと全く同一である。被控訴人らのスパーWハンマーは、圧力ピンがない点、両側面に二つの穴を設けた点を除き他の形状は控訴人ハンマーのものと全く同一である。被控訴人らのショートスパーハンマーは、圧力ピンがない点、指掛けから打撃面までの長さが2.7mm短い点を除き他の形状は控訴人ハンマーのものと全く同一である。被控訴人らの上記三つのハンマーに関する相違点はいずれも全体の形状からみて細部の相違点にすぎず、これらの形状と控訴人ハンマーの形状とが実質的に同一の範囲にあることは、明らかである。 (エ) 被控訴人シェリフのフローティングバルブは上記の基本的形態(全体の寸法も含める。)において共通し、主たる相違点である円筒状部分の相違点は極めて些細なものであり、円盤状部分の相違点は基本的形状の範囲内における円盤状形状に関する微細な改変にすぎず、羽根状部分における断面形状の相違は三枚羽の基本的形状の範囲内における断面形状の微細な改変であって印象が希薄である。三枚羽の長さが約半分になっている点は単なる寸法設計上における数値の変更にすぎず、そのことに格別被控訴人シェリフの企業努力がはらわれたものと認めることはできない。両商品は、共通する基本的形状の範囲内において実質的に同一である。 (オ) その他、控訴人フレーム、同スライド、同シアーの形態は、それぞれ、被控訴人らの対応する商品の形態と同一といい得る範囲内のもである。 (3) 被控訴人アングスの行為に基づく損害について 被控訴人アングスは、平成7年4月ころから平成9年9月21日(禁止期間3年間の最終日)までの間に、別紙アングス商品目録記載のとおり、アングス商品1ないし9について、同目録の販売単価欄記載の単価、販売数量欄記載の数量、利益率欄記載の利益率で販売し、それぞれ得た利益欄記載の利益(合計701万4990円)を得た。 被控訴人アングスは、アングス商品6(「チェンバーカバー こくいんくん」)を製造して販売している。このことは、同被控訴人が、主として玩具銃等の小売販売することを業としているものの、他にも、自ら他業者の製品のカスタムパーツも製造して販売することもしていること、その仕入伝票(甲第84号証)を始めとする帳票類中に、同商品(アングス商品6)を仕入れた形跡が見当たらないことから、明らかである。その場合、カスタムパーツを製造販売することによる利益率は、同じくカスタムパーツを製造販売している被控訴人シェリフが利益率60%であることからすると、それと同等の60%程度であるとするのが相当である。仮に、利益率を60%と推認することが困難であるとしても、被控訴人アングスは、アングス商品6に関する文書につき、裁判所の文書提出命令に従わないから、民事訴訟法224条1項、3項により、控訴人が主張する60%の利益率が認められてしかるべきである。 アングス商品6の販売数量、販売金額については、被控訴人アングスが同商品に関する文書につき、裁判所の文書提出命令に従わない以上、民事訴訟法224条1項、3項により控訴人の販売数量・販売金額についての主張を真実と認めるべきである。 アングス商品6以外の各商品の利益率は、30%を下回らない。なぜならば、被控訴人アングスの平成7年4月ないし平成10年3月の3期分の損益計算書によれば、3年間の売上合計は7億7604万3000円、売上原価を除いた売上総利益は2億3693万9000円であり、他に本件製品の販売に直接要した費用を認め難いので、売上高に対する利益率は約30.5%となるからである。 アングス商品6以外の各商品の販売数量については、被控訴人アングスの仕入伝票(甲第84号証)に記載されたものを認める。これらの販売金額は、控訴人が被控訴人アングスの店頭で試買したときのものである。 (4) 被控訴人フロンティアの行為に基づく損害について (ア) 被控訴人フロンティアは、平成7年2月ころから平成9年9月21日までの間に、別紙フロンティア商品目録A記載のとおり、フロンティア商品1ないし8について、同目録の販売単価欄記載の単価、販売数量欄記載の数量、利益率欄記載の利益率で販売し、それぞれ得た利益欄記載の利益(合計805万8240円)を得た。 平成7年2月から平成8年1月までの期間は、控訴人本体製品向けパーツが最も大量に売れた時期である。ところが、被控訴人フロンティアは、文書提出命令が発せられたにもかかわらず、同期間についてだけは、仕入伝票の提出をしていない。また、同期間については、仕入伝票のほかにも、具体的品目が記載された資料が提出されていない。仮に文書を既に失ったということがあったとしても、当該期間の仕入れ伝票だけが存在しないのは不自然である。控訴人の使用を妨げる目的で文書を滅失させたものにほかならない。さらに、仕入伝票が提出された期間についても、そこに記載された販売数量(甲第87号証)は、年商8億に達する同被控訴人における販売数量として異常に少ない数値であり、到底誠実に提出されたものとはいい難い。したがって、民事訴訟法224条1項ないし3項により、控訴人の販売数量・販売金額についての主張を真実と認めるべきであり、そうすると、同被控訴人が得た利益合計は、805万8240円ということになる。 (イ) 仮に、上記主張が認められないとしても、被控訴人アングスの提出した資料との対比において検討すると、被控訴人フロンティアは、平成7年2月ころから平成9年9月21日までの間に、別紙フロンティア商品目録B記載のとおり、フロンティア商品1ないし8について、同目録の販売単価欄記載の単価、推計される販売数量欄記載の数量、利益率欄記載の利益率で販売し、それぞれ得た利益欄記載の利益(合計279万5427円)を得たものと推認される。 (5) 被控訴人三ツ星商店の行為に基づく損害について 被控訴人三ツ星商店は、平成7年2月ころから平成9年9月21日までの間に、別紙三ツ星商品目録記載のとおり、三ツ星商品1ないし8について、同目録の販売単価欄記載の単価、販売数量欄記載の数量、利益率欄記載の利益率で販売し、それぞれ得た利益欄記載の利益(合計620万4000円)を得た。 被控訴人三ツ星商店は、文書提出命令に従うことを拒否しているから、民事訴訟法224条1項、3項により、控訴人の主張が真実と認められるべきである。 被控訴人三ツ星商店のカスタムパーツ仕入価格は、定価の50%であり、このことは、例えば、被控訴人シェリフの提出した帳票(戊第42号証の4の1枚目等)により認められる。これに対して、小売店への卸売価格は、控訴人と被控訴人三ツ星商店との取引に係る甲第66号証によると定価の60%である。被控訴人の利益率は、10%(卸売価格(定価の60%)−仕入価格(定価の50%))を下回らない。 被控訴人三ツ星商店は、大手玩具問屋であり、玩具銃の商圏においても、大きなシェア(市場占有率)を有している。控訴人と被控訴人三ツ星商店との間では、平成6年9月より平成8年7月まで取引があり、その間に、被控訴人三ツ星商店は、控訴人から控訴人フレーム1万1630丁を仕入れていた。被控訴人三ツ星商店は、上記仕入数に見合う数量のカスタムパーツ類を小売店に向けて販売していたと推認されるのであり、控訴人主張の上記数量には十分な合理性がある。 (6) 被控訴人Aの行為に基づく損害について (ア) 被控訴人Aは、平成7年4月ころから平成9年9月21日までの間に、別紙A商品目録A記載のとおり、A商品1ないし3について、同目録の販売単価欄記載の単価、販売数量欄記載の数量、利益率欄記載の利益率で販売し、それぞれ得た利益欄記載の利益(合計1212万3000円)を得たものと推認される。 被控訴人Aは、文書提出命令に対して、断片的な資料を提出するのみであり、裁判所の文書提出命令の趣旨に従わない。仮に文書を既に失っていたとしても、控訴人の使用を妨げる目的で文書を滅失させたものにほかならない。したがって、民事訴訟法224条1項ないし3項により、販売数量・販売金額についての控訴人の主張を真実と認めるべきである。 被控訴人Aは、被控訴人シェリフと同業(カスタムパーツ専門メーカー)であり、製品も同種の性質を有するので、シェリフと同程度、すなわち60%の利益率であると考えられる。 (イ) 仮に、上記事実が認められないとしても、被控訴人Aは、平成7年4月ころから平成9年9月21日までの間に、別紙A商品目録B記載のとおり、A商品1ないし3について、同目録の販売単価欄記載の単価、販売数量欄記載の数量、利益率欄記載の利益率で販売し、それぞれ得た利益欄記載の利益(合計372万6000円)を得たものと推認される。 (7) 被控訴人シェリフの行為に基づく損害について (ア) 被控訴人シェリフは、平成6年12月ころから平成9年9月21日までの間に、別紙シェリフ商品目録A記載のとおり、シェリフ商品1ないし6、8ないし11について、同目録の販売単価欄記載の単価、販売数量欄記載の数量、利益率欄記載の利益率で販売し、それぞれ得た利益欄記載の利益(合計3988万2078円)を得たものと推認される。 被控訴人シェリフの提出文書は、裁判所の文書提出命令の趣旨に合致しない。例えば、被控訴人シェリフが提出している伝票類に記載されている取引先は、大阪共栄、セキトー、三ツ星商店、フジカンパニー、大友商会、桑田商会、廣田の合計7社であるけれども、総勘定元帳によると、販売先と思われる業者約30社からの入金があり、これら取引先への販売にも侵害品の販売が含まれている可能性が大きい。また、被控訴人シェリフの平成6年10月ないし平成9年9月の間の総売上額に対する卸売額の割合は56.69%であり、その余の43.31%はユーザー(最終利用者)への直販によるものである。平成7年10月から平成9年9月までの2年間に限ってみれば、総売上額に対する卸売額の割合は41.80%に低下し、ユーザー直販部分が58.20%を占めている。ところが、被控訴人シェリフは、ユーザーに直販した数量・売上について資料を提出していない。したがって、民事訴訟法224条1項、3項により、控訴人の販売数量・販売金額についての主張を真実と認めるべきである。 控訴人が主張する販売数量、販売金額は、カスタムパーツ全体の販売数量及び被控訴人シェリフのシェアによる推計としても妥当なものである。すなわち、次のとおりである。 既に裁判上の和解が成立している有限会社ホビーフィックス(以下「ホビーフィックス」という。)との間の事件において、控訴人エアソフトガンに対する金属製スライドのカスタムパーツが、ある一つのメーカーから6か月間に5603個販売されていたことが判明している(甲第81号証の別紙4)。この期間における控訴人エアソフトガンの出荷数量は、2万4603丁であったから、これによれば、約23%の金属製スライドのカスタムパーツが一つのメーカーから販売されていたことになる。控訴人は、平成9年9月までに、合計9万2130丁の控訴人エアソフトガンを販売しているから、全体でみると、金属製スライドのカスタムパーツの販売数量は、23%を下回ることはなく、少なくとも2万1000個販売されていたものと推認される。上記のとおりの控訴人エアソフトガンに対する金属製スライドの販売比率から、同じ控訴人エアソフトガンに対する他の種類のカスタムパーツの市場規模を推定し、メーカー別のシェアを考慮すると、被控訴人シェリフにおいては、アウターバレルを1万2000個(別紙シェリフ商品目録Aの1〜4の合計に同じ)、チェンバーカバーを8000個(別紙シェリフ商品目録Aの5、6の合計においては若干少なく見積もって7643個としている。)、ハンマーを8500個(別紙シェリフ商品目録Aの8〜10の合計に同じ)、フローティングバルブを9000個を製造販売していると推定できる。そうすると、別紙シェリフ商品目録Aの控訴人の推定は、妥当な数値であるということができる。 被控訴人シェリフは、別件の大阪地方裁判所平成8年(ワ)第8750号に始まる一連の被控訴人シェリフと控訴人との間の訴訟事件(控訴審は大阪高等裁判所平成11年(ネ)第45号事件、上訴審は最高裁判所平成12年(オ)第540号・同平成12年(受)第441号事件である。以下、これらを「別件関連事件」と総称することがある。)において提出した準備書面において、自ら、利益率が62.51%であると述べている(甲第82号証)。被控訴人シェリフの利益率は、60%を下回らないことが明らかである。 (イ) 仮に、上記事実が認められないとしても、被控訴人シェリフは、平成6年12月ころから平成7年8月ころまでの間に、別紙シェリフ商品目録B記載のとおり、シェリフ商品1ないし6、8ないし11について、同目録の販売単価欄記載の単価、販売数量欄記載の数量、利益率欄記載の利益率で販売し、それぞれ得た利益欄記載の利益(合計889万8615円)を得たものと推認される。 3 当審における被控訴人らの主張の要点 (1) 控訴人エアソフトガンの部品の形態が法2条1項3号にいう「同種商品が通常有する形態」に該当するかについて (ア) 被控訴人アングス、同フロンティア 意匠法において「物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠」を不登録事由とし、商標法においても「商品の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標」を不登録事由としていることなどからすると、法2条1項3号の解釈において、商品の性質上、その形態が一義的に決まるものは、「通常有する形態」として法の保護の対象から外れるものと解するのが相当である。 控訴人は、部品形態の開発において、先行者は資金、労力を投下することが考えられるのであるから、法の趣旨からいって、その保護を受け得るべきであると主張する。 しかし、法が一定の資金、労力を投下した先行者の利益を、これにただ乗りする形で模倣する後行者から保護するというものであるとするならば、カスタムパーツについては、その趣旨は当てはまらない。なぜならば、先行者の商品(本体)には、その開発のために資金、労力が投下されている結果、その必要のない後行者の商品に比べ、価格が割高にならざるを得ず、その結果、廉価な模倣品との間において公正な競争が阻害されることになるのに対し、カスタムパーツの場合は、模倣品自体きわめて高額であり、その販売によって本体の流通販売を不当に阻害することはなく、公正な競争が害されるという関係になく、かえって、カスタムパーツの販売が、本体の売買を促進するという関係にあるからである。 (イ) 被控訴人シェリフ 意匠法は、「物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠」を不登録事由としており、商標法も、「商品の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標」を不登録事由としていることからすると、法2条1項3号の解釈として、商品の機能を確保するために不可欠な形態は、「通常有する形態」として法の保護の対象から外れるものと解するのが相当である。 そもそも、本訴において控訴人が模倣を主張している被控訴人シェリフの商品については、別件関連事件において争われ、4年以上にわたり審理を重ねた結果、すべての判決において模倣性が否定された。要するに、控訴人エアソフトガンのカスタムパーツが法2条1項3号にいう「同種商品が通常有する形態」に該当するかどうかに関する一連の紛争は、上記判決及び決定を経て確定し、実質的に解決しているものである。したがって、控訴人の本訴における主張は、上記確定判決に抵触するものというべきである、あるいは、これに遮断されて許されない主張である、というべきである。万が一、本訴で被控訴人シェリフが敗訴することになれば、当然最高裁に上訴することになるが、そのようなことが紛争の一回性の見地から見て著しく妥当性を欠くことは明らかである。このことは、訴訟上の信義則を認めた最高裁判所昭和49年4月26日判決の趣旨に照らしても明らかである。 (ウ) 被控訴人三ツ星商店 被控訴人シェリフの主張を援用する。 被控訴人三ツ星商店に関する別紙三ツ星商品目録の4のアウターバレル、5のチェンバーカバーは、製造者がシェリフであり、本訴の原審及び別件関連事件において模倣性が否定されているから、これらに関するものは、控訴人の被控訴人三ツ星商店に対す賠償請求額から除外されるべきである。 (エ) 被控訴人A 被控訴人シェリフの主張を援用する。 (2) 損害について (ア) 被控訴人アングス アングス商品の売上金額は、791万7100円であり、これにより被控訴人アングスが得た利益は、19万7928円である。 控訴人は、被控訴人アングスが提出した帳票類の中にアングス商品6の仕入がなされた形跡が見当たらないから、同商品は被控訴人アングスの自社製造製品であると主張する。しかし、仕入れに関する納品書中には、アングス商品6が「チェンバーカバー」として散見されており、「チェンバーカバー こくいんくん」は、被控訴人アングスの自社製造製品ではない。したがって、「チェンバーカバー こくいんくん」についての60%又は40%という利益率は、全く理由がない。 また、利益は、販売価格から仕入価格を引いただけでなく、人件費やその他販売諸経費を引いて初めて正確なものが算出される。本件でいうならば、被控訴人アングスの利益率の基礎となる利益は、売上げから売上原価を引き、更に人件費等の販売費及び一般管理費を引いた営業利益がこれに当たる。この営業利益をみると、被控訴人アングスの平成7年4月ないし平成10年3月の3期においては、唯一平成7年4月ないし平成8年3月期のみが黒字であり、その営業利益484万8127円を基に、売上に対する利益率を計算すると約1.68%にすぎず、3年間を平均すると更に少なくなる。したがって、仮に、控訴人の損害賠償の主張が認められたとしても、その損害額の算定の基礎となる利益率は、上記1.68%を超えることはない。なお、100歩譲って、被控訴人アングスの利益を決算書上の税引き前当期損益で計算したとしても、3年間の利益率は、4、46%、0.25%、1.21%であり、平均で約1.97%となる。 (イ) 被控訴人フロンティア フロンティア商品の売上金額は、201万8920円であり、これにより被控訴人フロンティアが得た利益は、11万1041円である。 被控訴人アングスの場合と同様、売上げに対する利益を正確に把握するには、単に仕入額を引いただけでは足りず、人件費等を含む販売費及び一般管理費もこれから控除しなければならない。こうした営業利益で被控訴人フロンティアの利益をみた場合、平成8年3月期決算で4.6%、平成9年3月期決算で5.37%、平成10年3月期決算で6.62%であり、平均でも5.52%にすぎない。したがって、仮に控訴人の損害賠償の主張が認められたとしても、その損害額算定の基礎となる利益率は、5.52%を超えることはない。 控訴人は、被控訴人フロンティアが文書提出命令に従わないことをもって、その主張する販売数量が認められるべきであるとするが、失当である。被控訴人フロンティアは、文書提出命令に従い、可能な資料の提出を行っている。 控訴人は、被控訴人フロンティアの年商が8億円であり、この数字からして仕入伝票に記載された販売数量が異常に少ないとして誠実に提出されたものではない旨主張するが、失当である。被控訴人フロンティアは、玩具一般を扱っており、銃玩具部品はそのごく一部にすぎないからである。 (ウ) 被控訴人三ツ星商店 三ツ星商品の売上金額は、218万7120円であり、これにより被控訴人三ツ星商店が得た利益は21万8712円である。 控訴人とホビーフィックスとの間において和解が成立し、そこで問題とされたもの以外の互換性部品を含め、「他に何らの債権債務のないことを確認する」との和解が成立しているから、少なくとも当時存在していた同社の製品については、控訴人は、流通を承認したものであり、あるいは、損害の補填がなされたものであり、同製品の流通につき模倣等を理由とする損害賠償の請求はできないものと考えられる。別紙三ツ星商品目録の2のアルミスライド、同6のチェンバーカバーは、製造者がホビーフィックスであるから、これらの商品については、控訴人の被控訴人三ツ星商店に対する賠償請求額から除外されるものである。 (エ) 被控訴人A 控訴人Aが、A商品1ないし3を製造販売していたことは認める。しかし、控訴人の損害の額についての主張は、過大にすぎるものである。 なお、被控訴人Aは、通信販売及び問屋を介し、マニアに対しA商品の販売をしていたところ、本件紛争が深刻さを増したので、その段階で、マニアや問屋に迷惑をかけることをおそれ、関連文書はすべて廃棄処分した。 (オ) 被控訴人シェリフ シェリフ商品の売上金額は、593万3600円であり、これにより控訴人シェリフが得た利益は、65万2029円である。 控訴人は被控訴人シェリフの利益率は60%であるという。しかし、控訴人は利益率を粗利で計算しており、その計算方法は、現在の通説・判例に反している。また、控訴人は、被控訴人シェリフが、別件関連事件において、自らの利益率について62.51%であると述べていた旨主張する。しかし、別件関連事件は被控訴人シェリフが原告として損害賠償を請求していた事案であって、自らに最大限有利な主張として粗利計算にて主張したにすぎない。いずれにしても、利益率は、粗利ではなく営業利益によって計算すべきであり、その場合、被控訴人シェリフの営業利益(営業損失)は、平成6年10月1日ないし平成7年9月30日において14.1%、平成7年10月1日ないし平成8年9月30日においてマイナス4.4%、平成8年10月1日ないし平成9年9月30日においてマイナス5.4%である。営業利益が直近の2期連続でマイナスになっている以上、利益率に基づいた損害の算定をすることができない。なお、3期中2期について営業損失が発生している理由は、控訴人の営業誹謗行為により、被控訴人シェリフの得意先が取引を中止したことによるものである。 控訴人は、販売価格を定価販売として算定しているが、現今のデフレ経済の下で、定価だけで販売しているわけがない。特に、直販の場合、多くを定価から割引して販売している。 控訴人は、被控訴人シェリフの提出文書が文書提出命令の趣旨に合致しないとするが、全く根拠がない。 第3 当裁判所の判断 当裁判所は、本訴請求は、控訴人が、@被控訴人アングスに対し、74万4237円及び内金64万4237円に対する平成9年4月19日から支払済みまでの、内金10万円に対する平成13年1月30日から支払済みまでの、民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を、A被控訴人フロンティアに対し、82万7977円及び内金72万7977円に対する平成9年4月19日から支払済みまでの、内金10万円に対する平成13年1月30日から支払済みまでの、民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を、B被控訴人三ツ星商店に対し、531万2000円及び内金481万2000円に対する平成9年4月19日から支払済みまでの、内金50万円に対する平成13年1月30日から支払済みまでの、民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を、C被控訴人Aに対し、194万円及び内金174万円に対する平成9年4月19日から支払済みまでの、内金20万円に対する平成13年1月30日から支払済みまでの、民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を、D被控訴人シェリフに対し、258万0441円及び内金228万0441円に対する平成9年4月19日から支払済みまでの、内金30万円に対する平成13年1月30日から支払済みまでの、民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を、それぞれ求める限度で理由があるからこれらを認容し、その余は理由がないから棄却すべきものであると判断する。 1 控訴人エアソフトガンの部品の形態が法2条1項3号にいう「同種商品が通常有する形態」に該当するか否かについて (1) 法2条1項3号は、他人の商品の形態を模倣した商品の譲渡行為等を他人の商品が最初に販売された日から3年間に限って不正競争行為とする一方で、その括弧書きにおいて、当該他人の商品と同種の商品(同種の商品がない場合にあっては、当該他人の商品とその機能及び効用が同一又は類似の商品)が通常有する形態は、同号による保護の対象から除外される旨を規定している。「事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保」して「もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」(1条)というその目的に鑑みれば、法は、開発に時間も費用もかけず、先行投資した他人の商品形態を模倣した商品を製造販売して、投資に伴う危険負担を回避しつつ、市場に参入しようとすることは、公正とはいえないことに着目し、上記規定により、そのような行為を不正競争行為として禁ずることにしたものと解するのが相当である。 他方、当該他人の商品と同種の商品(同種の商品がない場合においては、当該他人の商品とその機能及び効用が同一又は類似の商品)が通常有する形態をも、法2条1項3号による保護の対象としたならば、上記同種の商品が通常有する形態のすべてを、通常有する形態であるにもかかわらず、特定の者に独占させることとなる。「商品が通常有する形態」とは、当該商品のものとして、ありふれた形態、又は、その商品としての機能及び効用を果たすために不可避的に採用しなければならない形態を意味するものと解するのが相当であり、このような形態は、それがありふれた形態であるときは、その採用に困難を伴うことのないものであるために保護の必要性に乏しいことに加えて、そうではないときであっても、このような形態を特定の者に独占させるならば、後発の者が、同種の商品を製造販売できなくなるおそれがあり、複数の商品が市場で競合することを前提としてその競争のあり方を規制しようとする法の趣旨に反することになるので、法は、上記の意味で、同種商品が通常有する形態を、保護の対象から除外したものと解するのが相当である。そして、法が「同種の商品が通常有する形態」を同号による保護の対象から除外したのが上記のような理由であるとすると、保護の対象から除外すべきか否かを判断する際の要件の一つとなる「同種の商品」として何をとらえるかに当たっては、模倣を主張する者の競争者(本件においては被控訴人ら)に対してどの範囲において商品の製造販売の自由を保障しなければならないかが、判断要素として重要なものになるというべきである。「同種の商品」としての機能及び効用を果たすために不可欠に採用しなければならない形態であることを理由に、模倣することを認め、同号の保護の対象から外すことが是認されるためには、その「同種の商品」の製造販売が、公正な競争行為として保障されるべきであるということが、その前提として認められなければならないからである。 (2) 証拠(各項目ごとに括弧内に摘示する。)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができる。 (ア) エアソフトガンとは、ガスによってプラスチック製のBB弾と呼ばれる弾丸を発射する、本物の銃器(以下「実銃」という。)を模した遊技銃の一種のことである。 実銃とエアソフトガンとでは、外観と操作性は類似するものの、材質、構造等において大きく異なる。実銃は、その材質が鋼鉄等で、火薬の爆発力により実弾を発射するのに対し、エアソフトガンは、プラスチック等を材質とし、ガス及びスプリングによって作動し、プラスチック弾を発射する。エアソフトガンは、外観、操作性を実銃に似せつつ、独自の内部構造を有することによって商品化されているものである。 (甲第7、12、24、25、26号証、戊第22号証) (イ) 実銃においては、バレル(銃身)は、チェンバー(薬室)から銃口に至るまで単一の金属製の部品となっているのに対し、エアソフトガンにおいては、実銃と同様にバレルが一体となっているもののほか、バレル部分を、プラスチック弾を通過させるインナーバレルアッセンブリーとアウターバレルアッセンブリーとに分けているものがあり、さらに、アウターバレルアッセンブリーを、アウターバレルとチェンバーカバーとに分けているものもある。 また、モデルガンとエアソフトガンとを対比すると、両者は、外観を実銃に似せた遊技銃である点では同じであるものの、両者の間には、前者においては、弾丸を発射することができないのに対し、後者においては、プラスチック弾を発射することができる、という、機能に関する相違がある。モデルガンにおいては、弾丸を発射させないので、もっぱら外観に注意を払い、実銃を形態の面で忠実に再現すれば足りるということができる。これに対し、エアソフトガンにおいては、実銃におけるのと全く異なる発射原理の下に弾丸を発射させなければならないため、外観は実銃のモデルにできるだけ似せつつ、内部には、プラスチック弾を発射するための独自の機能を組み込まなければならない、という制約を受けることとなる。 (甲第25、33、51号証、丁第10、12、13号証、戊第16、17、21、22号証) (ウ) コルト社製の実銃である「コルトマークWシリーズ80ガバメントモデル」(以下「ガバメントモデル」という。)を模した遊技銃は、愛好者の間において人気が高いものである。ガバメントモデルを模したモデルガンとしては、MGC社製モデルガン、控訴人製モデルガン等が存在し、これらは、遅くとも昭和58年ころから販売されていた。これらのモデルガンは、外観を実銃のモデルにできるだけ似せつつ、引き金を引くと、これにシアーが連動し、ハンマーが落ちるという動作をするものであった。ガバメントモデルを模したエアソフトガンとしては、マルシン工業株式会社、有限会社タナカが、遅くとも平成元年ころには、独自の弾丸発射機能を有するものを製造販売しており、このうち、マルシン工業株式会社のものは、外観を実銃のモデルにできるだけ似せているとともに、引き金を引くと、これにシアーが連動し、ハンマーが落ち、ガスによってプラスチック弾が発射され、同時にスライドが後退するなどという動作をするものであった。有限会社タナカのエアソフトガンは、スライドが後退するという機能を有していない点を除けば、おおむね、マルシン工業株式会社のそれと同様の動作をするものであった。 (甲第28、51号証、甲第52号証の1、2、戊第22、25号証) (エ) 控訴人エアソフトガンもまた、ガバメントモデルを模したエアソフトガンであった。 控訴人は、エアソフトガンの発射原理について、フローティングバルブを中心とするガス圧の切り替えを工夫することによって、実銃と同じく、弾丸を発射した後にスライドが後退し、スライドが反転・前進する際に次弾が装填されるという作動が自動的に連続して行われる、マグナブローバックシステムと称する方式を開発し、これによって、従来のエアソフトガンに比べて実銃によりよく似た動作をするエアソフトガンとすることができるようにした。控訴人エアソフトガンは、外観を実銃のモデルにできるだけ似せているという点では従来のモデルガン、エアソフトガンと同様であり、引き金を引くと、これにシアーが連動し、ハンマーが落ち、ガスによってプラスチック弾が発射され、同時にスライドが後退するという点ではマルシン工業株式会社のエアソフトガンと同様であり(引き金を引くと、これにシアーが連動し、ハンマーが落ち、弾が発射され、同時にスライドが後退する、という限度では実銃とも一致する。)、後退したスライドが反転・前進する際に次弾が装填されるという作動が自動的に連続して行われるという点で特徴があるものである。控訴人エアソフトガンは、上記マグナブローバックシステムの方式を実施するための構造となっており、別紙展開図に示されるように、合計100近くの部品から成るものである。 (甲第12、23号証) (3) 控訴人エアソフトガンが上記のとおりのものであることを基礎として、控訴人がその形態を模倣されていると主張している控訴人フレーム、同スライド、同アウターバレル、同チェンバーカバー、同シアー、同ハンマー、同フローティングバルブについて考察する。 (ア) フレーム 甲第1、51号証、検甲第1号証によれば、控訴人フレームの形態は、別紙控訴人商品目録の@及び別紙控訴人フレーム説明図のとおりであり、別紙展開図に示されているとおり、控訴人エアソフトガンの一部品であって、直接的には、シャーシ、プランジャーガイド、シアー・スプリング、メイン・スプリング・ハウジング、マガジン等と組み合わされるものである。控訴人フレームは、マグナブローバックシステムの方式とは関係なく、専ら、外観が問題となるものであり、この点では、実銃やモデルガン、他社のエアソフトガンとほとんど変わるところがない。 丁第9、10号証によれば、MGC社製モデルガンは、控訴人フレームと対比すると、全体の基本的形状においても具体的な形状においても、色彩においても、酷似しており、穴の大小、溝の幅等においてわずかに相違している程度であることが認められる。 そうすると、控訴人フレームに格別の形態的な特徴を見いだすことはできない。控訴人フレームの形態は、同種商品であるモデルガンのフレームが通常有する形態であるということができる。 (イ) スライド 甲第1、51号証、検甲第2号証によれば、控訴人スライドの形態は、別紙控訴人商品目録のA及び別紙控訴人スライド説明図のとおりであって、別紙展開図に示されているとおり、控訴人エアソフトガンの一部品であり、直接的には、フレーム、ローディング・ノズル、チェンバーカバーと組み合わされるものである。控訴人スライドも、マグナブローバックシステムの方式とは関係なく、専ら、外観が問題となるものであり、この点では、実銃やモデルガン、他社のエアソフトガンのスライドとほとんど変わるところがない。 丁第9、10号証によれば、MGC社製モデルガンは、控訴人フレームと対比すると、全体の基本的形状においても具体的な形状においても、色彩においても、酷似しているということが許されるほどに似ていることが認められる。 いわゆるショートリコイル用の内側の溝(ロッキングリセス)についても、戊第16、17号証によれば、実銃、モデルガンにおいて既に存在していることが認められる。 そうすると、控訴人スライドに格別の形態的な特徴を見いだすことはできない。控訴人フレームの形態は、同種商品であるモデルガンが通常有する形態のものであるということができる。 (ウ) アウターバレルとチェンバーカバー (a) 甲第1、51号証、検甲第3号証によれば、控訴人アウターバレルの形態は、別紙控訴人商品目録のB及び別紙控訴人アウターバレル説明図のとおりであることが、また、甲第1、51号証、検甲第4号証によれば、控訴人チェンバーカバーの形態は、別紙控訴人商品目録のC及び別紙控訴人チェンバーカバー説明図のとおりであることが、それぞれ認められる。 控訴人エアソフトガンにおいては、別紙展開図及び別紙バレル構造図@及びAに示されているとおり、実銃のバレル部分に相当する部分を、プラスチック弾を通過させるインナーバレルアッセンブリーとアウターバレルアッセンブリーとに分け、さらに、アウターバレルアッセンブリーを、アウターバレルとチェンバーカバーとに分ける構造が採用されている。 甲第23号証によれば、控訴人アウターバレル及び同チェンバーカバーは、マグナブローバックシステムの方式に関係しており、インナーバレルアッセンブリーの動作とは独立して、外側のアウターバレルアッセンブリーが前後動し、しかも、実銃のバレルの動作と同様に、斜め下に向けて後退するようにしており、前記(2)(ウ)認定のマルシン工業株式会社や有限会社タナカのエアソフトガンとは異なった独自の動作をするものであることが認められる。 甲第1号証、検甲第3号証によれば、控訴人アウターバレルは、銀色の真鍮製でパイプ状をしており、一端の内側には雌ねじが切られ、雌ねじの終わったところに半弧状の切り欠きが設けられており、他端(銃口側)の内側には、内周を6等分するように低い凸部が設けられて、上記凸部による凹凸のほぼ終わったところの外側に浅い段差が設けられ、端部の方がわずかに太めとなっていることが認められる。 甲第1号証、検甲第4号証によれば、控訴人チェンバーカバーは、プラスチック製であり、略パイプ状をしており、略パイプ状の形状の一端の外側には雄ねじが切られ、他端の底部には、端から中央部付近に至るほどの矩形の切り欠きが設けられ、その切り欠きの両側に略台形状の脚部が設けられ、両脚部には、1個の小穴が設けられており、矩形の切り欠きの反対側で、中央より雄ねじに寄ったところには、2本の半弧状の浅い凹部が設けられており、雄ねじ部の内外面は黒色に塗装され、その他は銀色に塗装されていることが認められる。 (b) 控訴人アウターバレル及び同チェンバーカバーにおいて、実銃のバレルに相当する部分を、インナーバレルアッセンブリーとアウターバレルアッセンブリーとに分け、さらに、アウターバレルアッセンブリーを、アウターバレルとチェンバーカバーとに分けている点は、前述したとおり、既に他社のエアソフトガンに採用されていたものであるから、通常有する形態というべきである。 しかし、アウターバレルアッセンブリーをどのように分離し、分離したものをどのように結合するか、分離したものをどのような形状にするかには、なお選択の余地があるということができる。 甲第23、51号証及び弁論の全趣旨によれば、控訴人アウターバレルにおいて、全体の形状をパイプ状としているのは、インナーバレルアッセンブリーを内部に収納するためであり、一端内側の雌ねじは、チェンバーカバーと結合させるためのものであり、半弧状の切り欠きは、改造銃とされることを防ぐためのものであり、同チェンバーカバーにおいて、略パイプ状の形状及び矩形の切り欠きは、インナーバレルアッセンブリーを内部に収納するためのものであり、一端外側の雄ねじは、アウターバレルと結合させるためのものであり、2本の半弧状の浅い凹部(ロッキングラグ)は、実銃のショートリコイルと同様に控訴人スライドを連動させるためのものであり、脚部の小穴は、リンクピンと結合し、実銃と同様にアウターバレルアッセンブリーを斜め下に向けて後退させるためのものである。 上記によれば、控訴人アウターバレルにおいて、その全体の形状がパイプ状であること、控訴人チェンバーカバーにおいて、その全体の形状が略パイプ状であり、2本の半弧状の凹部があり、小穴を有する脚部があることは、同種商品が通常有する形態というべきであるものの、控訴人アウターバレルの半弧状の切り欠き、控訴人チェンバーカバーの矩形の切り欠きは、それぞれ、形態的な特徴を有するものということができる。 (c) 甲第51号証、戊第22号証、検戊第12号証によれば、有限会社タナカあるいはマルシン工業株式会社のエアソフトガンも、バレル部分をインナーバレルアッセンブリーとアウターバレルアッセンブリーとに分け、さらに、アウターバレルアッセンブリーを、アウターバレルとチェンバーカバーとに分けていること、しかし、上記各アウターバレル及びチェンバーカバーは、控訴人アウターバレル、同チェンバーカバーとは一見して明らかに形状が異なっており、例えば、控訴人アウターバレルにおける半弧状の切り欠き、控訴人チェンバーカバーにおける矩形の切り欠き、半弧状の凹凸がなく、脚部の形状、数も著しく異なっていることが認められる。 上記認定の事実の下では、控訴人アウターバレル、同チェンバーカバーの形態は、ありふれた形態ということはできず、また、機能から不可避に導き出されるものでもなく、種々に採り得る形態の一つを選択しているにすぎないものというべきである。そして、そうである以上、控訴人アウターバレル及び同チェンバーカバーの形態は、同種商品が通常有する形態であるとはいえないものというべきである。 (エ) シアー (a) 甲第1、23、51号証、検甲第5号証によれば、控訴人シアーの形態は、別紙控訴人商品目録のD及び別紙控訴人シアー説明図のとおりであり、別紙展開図に示されているとおり、控訴人エアソフトガンの一部品であり、直接には、ディスコネクターと組み合わせて、シャーシに取り付けられるものである。控訴人シアーは、マグナブローバックシステムの方式とは関係なく、専ら、引き金を引くと、これにシアーが連動し、ハンマーが作動するという機能に関連しているものである。 甲第51号証によると、控訴人シアーを側面からみると、実銃のそれとほぼ同じであること、しかし、実銃の場合は、幅に厚みを持たせてハンマーと同じ厚さとし、幅方向の中央にスリットを設け、そのスリットにディスコネクターをはめ込んで接合させているのに対して、控訴人シアーでは、幅の厚みをハンマーの約半分とし、実銃のようにスリットを設けておらず、ディスコネクターと側面で接触させて接合させるという簡略な構造としている点で相違していることが認められる。 (b) 甲第51号証、戊第22号証、検戊第12号証によれば、有限会社タナカ及びマルシン工業株式会社のエアソフトガンのシアーは、いずれも、側面からみると、実銃のそれと似ており、幅に厚みを持たせてハンマーと同じ厚さとしていること、しかし、実銃のようにスリットを設けていないことが認められる。 (c) 上記の各事実を考慮すると、控訴人シアーの形状は、幅の厚みがハンマーの約半分となっている点において、実銃のそれとも、従来のエアソフトガンのそれとも相違しているということができる。しかしながら、幅の厚みがハンマーの約半分となっている点は、形態的には、ごく単純な相違であって、実銃や従来のエアソフトガンに存する形態の亜流であって、ありふれたもの、すなわち、同種商品が通常有する形態のものであるというべきである。 (オ) ハンマー (a) 甲第1、23、51号証、検甲第6号証によれば、控訴人ハンマーの形態は、別紙控訴人商品目録のE及び別紙控訴人ハンマー説明図のとおりであり、別紙展開図に示されているとおり、控訴人エアソフトガンの一部品であり、フレームに取り付けられるものである。控訴人ハンマーは、マグナブローバックシステムの方式とは関係なく、専ら、引き金を引くと、これにシアーが連動し、ハンマーが作動するという機能に関連しているものである。 上記認定の事実及び前記甲第51号証によれば、控訴人ハンマーの全体の基本形状は、実銃のそれと同じであること、しかし、具体的形状をみると、実銃にはないバウンドロックノッチを有していること、実銃のフルコックノッチの部分に相当する部分のみがハンマーの他の部分の厚みの半分となっていることが認められる。 甲第23号証によれば、控訴人エアソフトガンでは、控訴人ハンマーが、ファイアリングピンと称する部品を介して、エアソフトガンにおけるマガジン内のガス通路を開くバルブを押し込む構造になっていること、控訴人ハンマーの誤操作によりバルブを誤って押すことを防止するために、バウンドロックノッチを設け、ハンマーがファイアリングピンに接触する直前の位置で、控訴人シアーによって控訴人ハンマーを固定するようにしていることが認められる。 甲第51号証によれば、前記有限会社タナカあるいはマルシン工業株式会社のエアソフトガンのハンマーは、ハンマーの全体の基本構成は、実銃を模しているため、控訴人ハンマーとほぼ同じであるものの、いずれも、ひげばねでハンマーを回転させており、押しばねでハンマーを回転させる方式の実銃と違っているため、軸穴周辺の形状において実銃と違ったものとなっており、控訴人ハンマーとは更に違ったものとなっていることが認められる。 控訴人ハンマーにおいて、バウンドロックノッチを有していること、実銃のフルコックノッチに相当する部分のみがハンマーの他の部分の厚みの半分となっていることは、いずれも、形態的な特徴を付与するものということができる。控訴人ハンマーは、同種商品が通常有する形態であるとはいえないものというべきである。 (b) 被控訴人Aは、控訴人ハンマーはガバメントモデルを模したMGC社製モデルガンのハンマーとほぼ同一であり、MGC社製モデルガンに、控訴人ハンマーを組み込んでも正常に作動すると主張する。 しかしながら、丁第9、10号証によると、MGC社製モデルガンのハンマーは、控訴人ハンマーのようなバウンドロックノッチを有していないことが認められるので(フルコックノッチがハンマーの全体の厚みの半分となっているかどうかは、明らかでない。)、被控訴人ハンマーと相違していることは、明らかである。 また、たとい、控訴人ハンマーをMGC社製モデルガンに組み込んで正常に作動するとしても、そもそも、モデルガンにおいては、モデルガンであることのゆえに、控訴人ハンマーにバウンドロックノッチがあること、実銃のフルコックノッチに相当する部分がハンマーの全体の厚みの半分となっていることが何の役目も果たさず、逆に、障害にもならないために、代用品となり得るというだけである。 被控訴人Aの主張は、採用できない。 (カ) フローティングバルブ 甲第1、23、53号証、検甲第7号証によれば、控訴人フローティングバルブの形態は、別紙控訴人商品目録のF及び別紙控訴人フローティングバルブ説明図のとおりの形状で、ローディングノズル、フローティングバルブ等によって形成される空洞内に組み込まれて前後に遊動し、ガスの流れを制御する控訴人エアソフトガンの一部品であること、控訴人フローティングバルブは、マグナブローバックシステムの方式に直接に関係しているものであることが認められる。 上記認定によれば、控訴人フローティングバルブは、全体の基本的形状として、フローティングバルブスプリングに挿入される軸の部分と、弁の部分と、羽根の部分とから成っており、具体的には、軸の部分は、短い円柱形状となっており、弁の部分は、円盤形状となっており、羽根の部分は、長い3枚の羽根となっていることが認められる。 甲第23、53号証及び弁論の全趣旨によれば、控訴人フローティングバルブは、円盤部分において、前後のガス通路を切り換える弁の役割を果たし、軸に取り付けられた3枚羽の部分において、フローティングバルブを支える軸をガス通路に置きながら、ガスの導出を妨げないような形状となっているものであることが認められる。 戊第20号証によれば、エアソフトガンのガスの制御に関しては、平成5年2月ころに発売されたホビーフィックス製のエアソフトガンにおいて、ピストンシリンダーとピストンロッドによって行っている例があったことが、また、検第7号証及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人シェリフが、控訴人エアソフトガンの発売前に「コルトM16ニューエアースイッチ」という名称のフローティングバルブ(ポペット方式の方向制御弁)を販売していたことが認められる。したがって、エアソフトガンのガスの制御のために、ピストンやポペット方式の方向制御弁を用いるという形態自体は、「通常有する形態」に属するものということができる。 しかし、控訴人フローティングバルブは、従来のエアソフトガンのピストンや弁でなく、上記の形態を採用することによって、ガスの制御をしているものであって、機能から不可避に導き出されるものではなく、種々に採り得る形態の一つを選択しているにすぎないものというべきである。 以上によれば、控訴人フローティングバルブの形態は、同種商品が通常有する形態であるとはいえないものというべきである。 (4) 被控訴人らは、控訴人商品の形態は、いずれも、商品の性質上、一義的に決まるものであるから、法2条1項3号の同種商品が「通常有する形態」に該当する、あるいは、商品の機能を確保するために不可欠な形態は、法2条1項3号の同種商品が「通常有する形態」に該当する旨主張する。 (ア) 控訴人エアソフトガンの部品を製造しようとする場合、その部品は、控訴人エアソフトガンの関連する他の部品と組み合わされなければならない必要上、控訴人エアソフトガンの当該部品の基本的形態を踏襲せざるを得ないことが多いことが予想され、その意味で、部品の形態が一義的に決まっており、選択の余地がないということは十分にあり得ることである。しかし、そうであるからといって、当該部品の形態が、その商品としての機能及び効用を果たすために不可避的に採用しなければならない形態であるとして、「同種商品が通常有する形態」に該当するということはできないというべきである。なぜならば、模倣者は、控訴人エアソフトガンに着目し、その部品を製造するという選択をしたからこそ、上記のように、控訴人エアソフトガンの当該部品の特徴ある形態を不可避的に採用しなければならなくなっているのであり、模倣者による控訴人エアソフトガンの部品の特徴ある形態の模倣は、上記選択による必然的な結果の一つであるということができ、このような選択をする自由を、特徴ある形態の部品の保護を犠牲にしてまで、自由競争の名の下に保障することが、法の目的に適うとは考えられないからである。模倣者は、これを避けるためには、控訴人エアソフトガンの特徴ある形態の部品の製造をやめ、例えば、控訴人以外の者のエアソフトガンの、保護に値する特徴を有さない部品の製造販売をするなり、自らの創意工夫により、控訴人エアソフトガンとは異なった形態の遊技銃及びその部品を考案するなどすべきであり、それは、控訴人エアソフトガンが同種商品が通常有する形態のものではないことからすれば、十分に可能なことというべきである。 (イ) 被控訴人らの前記主張は、結局のところ、本件で問題とすべき「同種の商品」の範囲に入るものとして控訴人エアソフトガンの個々の部品のみを考え、他のものは一切考えないことにした上で、このような意味での「同種の商品」についての自由な競争は、控訴人エアソフトガンの部品のそれ自体保護に値する特徴ある形態の保護を犠牲にしてでも保障しなければならない、とするものである。換言すれば、問題となる商品が他の商品の部品であるときには、部品である当該商品の製造販売の自由に、模倣の禁止を理由に制限が加えられることは一切あってはならないことを、当然の前提にするものである。しかし、このような前提を認めるべき根拠を見いだすことはできない。少なくとも、控訴人エアソフトガンの部品については、次に述べるとおり、控訴人エアソフトガン自体に、保護に値する特徴ある形態が認められるのであり、そのような商品の部品にしかならない商品を製造販売しようとする者に、上記のように強い保護を与えることに、合理性を認めることはできないものというべきである。 (ウ) 前述したとおり、控訴人エアソフトガンが発売される前から、既に他社製の複数のエアソフトガンが存在していたのであり、控訴人エアソフトガンは、これらの複数あるエアソフトガンの一つにすぎない。本件全証拠を検討しても、同エアソフトガンの形態が、エアソフトガンの分野において事実上の標準となったということもできない。 内部構造が外に現われず、需要者が注目することもない商品の場合には、外に現れない内部構造は法にいう商品の形態の構成要素に当たらないというべきである。しかし、内部構造が外に現われ、その内部構造に需要者が注目する商品の場合には、内部構造もまた商品の形態の構成要素に当たるものというべきである。 甲第12、25号証、戊第20、22、25号証によれば、エアソフトガンは、一般に、完成品を操作して遊技するのみならず、分解したり、組み立てたり、さらには、性能、機能や外観を変えたり、改良したりもして楽しむこと(カスタムやチューンアップと呼ばれる。)をも予定している商品であり、そのために、商品の取扱説明書において、完成品の操作の説明のみならず、分解、組立ても詳細に説明していること、そして、控訴人エアソフトガンにおいてもまた同様であることが認められる。 上記認定の事実によれば、控訴人エアソフトガンは、内部構造が外に現われ、むしろその内部構造にこそ需要者が注目する商品であることが認められ、そうである以上、控訴人エアソフトガンにおいては、外側の形状、模様、色彩のみならず、内部構造もまた商品の形態の構成要素に当たるものというべきである。 上述したところを前提にした場合、個々の控訴人商品を用いた完成品である控訴人エアソフトガンは、コルト社製の実銃であるガバメントモデルを模したエアソフトガンであり、前述したとおり、外観は、実銃にできるだけ似せているものの、エアソフトガンの発射原理について、フローティングバルブを中心とするガス圧の切り替えを工夫することによって、実銃と同じく、弾丸を発射した後にスライドが後退し、スライドが反転・前進する際に次弾が装填されるという作動が自動的に連続して行われる、マグナブローバックシステムの方式を実施するための構造としたものであり、控訴人エアソフトガンの部品の構造及び組合せに、控訴人エアソフトガンに独自の形態的な特徴を認めることができるから、控訴人エアソフトガン自体について、「同種の商品が通常有する形態」に当たらない、独特の商品形態をしたものであるといい得ることは、明らかである。 上記のとおり、控訴人エアソフトガン自体について、「同種の商品が通常有する形態」に当たらない、独特の商品形態をしたものといい得るのであれば、控訴人でない第三者が、控訴人エアソフトガンを構成する複数の部品と同一の形態の部品を製造してこれを組み立て、控訴人エアソフトガンと同一の内部構造を有するエアソフトガンにして販売することが許されないことは、明らかというべきである。なぜなら、上記行為は、控訴人エアソフトガン自体の形態を模倣する行為ということになるからである。 上記のとおり、エアソフトガンを控訴人エアソフトガンと同一の内部構造を有するものにして販売することが許されないのであれば、控訴人エアソフトガンを構成する複数の部品についても、当該部品が保護に値する特徴ある形態を有するものである限り、これと同一の形態の部品を製造して販売することも、許されないことは、むしろ当然というべきである(もともと、控訴人エアソフトガンの模倣という場合、これをある側面からみると、控訴人エアソフトガンを構成する個々の部品の模倣の総体であるということができるから、個々の部品の模倣は、当該部品が控訴人エアソフトガンの部品としてしか用いられないものである限り、控訴人エアソフトガン自体の模倣の一部を構成するものであるということもでき、全体として許されない行為の一部として違法となるとみることも、あながち不可能ではないということもできるのである。このことは、個々の部品の模倣は、部品の模倣である限り適法であるとすると、例えば、これらの模倣により製造された個々の部品が顧客の下で組み合わされてエアソフトガンとなった場合(このことは、エアソフトガンという商品の前記特色に照らすと、生じる見込みの非常に大きい事態である。)、全体としてみれば、本来、法が禁止していたはずの控訴人エアソフトガン自体の模倣が適法になされてしまうという結果を認めることになってしまうことからも、裏付けられるものというべきである。)。 (エ) この点に関連して、いわゆる交換部品の市場における自由競争保護の要請から、交換部品の模倣品については、法2条1項3号による保護がないとする考え方がある。 確かに、商品が破損した場合には修理の必要が生じ、その場合、消費者に過大な負担を負わせないように、公正な競争秩序が要請されることは明らかである。しかし、交換部品の市場、特に、いわゆるカスタムパーツの市場について、修理のための部品と同列に考えることはできない。 前記のとおり、エアソフトガンの愛好者の間では、その楽しみ方として、その性能、機能や外観を変えたり、改良したりすることが行われており、その需要に応(こた)えるために、本体としてのエアソフトガンに対応したカスタム用の部品(カスタムパーツ)が販売されているのである。決して通常の意味での修理のために販売されているのではない。 控訴人エアソフトガンのカスタムパーツがこのようなものである以上、公正な競争秩序の維持といっても、控訴人エアソフトガン用の部品(カスタムパーツ)を自由に製造販売することを、それが交換部品であることのゆえに、許容しなくてはならない特別の必要性を見いだすことはできない。少なくとも、修理部品とは異なる、カスタムパーツのような交換部品の市場においては、完成された商品の市場における形態模倣の規制と同様に、交換部品の模倣の規制がなされるべきものであり、交換部品であるからといって、特別に模倣規制を緩和すべき理由を見いだすことはできない。 (オ) 被控訴人シェリフは、控訴人商品は、モデルガンである以上、実銃のコピーにすぎないから、独創性が否定される、独創的でないものは法の保護に値せず、控訴人商品の形態は基本的に「通常有する形態」として法2条1項3号の保護を得られない、と主張する。 しかしながら、エアソフトガンは、実銃やモデルガンと「同種の商品」に該当するということはできるとしても、モデルガンや実銃と比較して機能面、効用面で相違しており、これに応じて、モデルとなった実銃にない形態を採り得るものであることは、前述したとおりであるから、いちがいに、「モデルガンである以上、実銃のコピーにすぎないから、独創性が否定される」などといえるものではない。 また、前述したとおり、法2条1項3号は、他人の商品形態を模倣した商品の譲渡行為等を他人の商品が最初に販売された日から3年間に限って不正競争行為とする一方で、その括弧書きにおいて、当該他人の商品と同種の商品(同種の商品がない場合にあっては、当該他人の商品とその機能及び効用が同一又は類似の商品)が通常有する形態は、同号による保護の対象から除外される旨を規定しているのであって、問題となっている商品の形態について必ずしも独創的であることを保護の要件として要求しているわけではなく、同種の商品が通常有する形態をしている場合を保護の対象から除くことにしているだけである。そして、同号は、後述するように、典型的には、いわゆるデッドコピーといわれるほど酷似した商品を規制するものであって、単に類似しているという程度の商品まで規制するものではない。 控訴人エアソフトガンは、外観は実銃に似せるという目的から、全体的、概括的にみた基本形状において実銃との間に多々共通点があることは、当然であるけれども、同エアソフトガンの部品のうちの、前記のとおり検討した、控訴人アウターバレル、同チェンバーカバー、同ハンマー、同フローティングバルブにおいては、実銃やモデルガンとは異なる機能、効用を果たさせるために、部分的に実銃、モデルガンの形状を借用しつつ、最終的には、エアソフトガンの部品として独自の形状をしているのであるから、一見して実銃、モデルガンの部品の形状に似ているということだけで、「通常有する形態」に該当するということはできない。 実銃、モデルガンの「通常有する形態」の部品のみを控訴人エアソフトガンに組み込んだ場合に、同エアソフトガンがエアソフトガンとして正常な機能、効用を果たさないことは、前述したところから明らかであり、それゆえにこそ、控訴人エアソフトガンの部品(カスタムパーツ)としては、実銃、モデルガンの「通常有する形態」の部品の形態のもののみではなく、控訴人アウターバレルその他の特有の形態のものも製造販売されているのである。 被控訴人シェリフの上記主張は、採用できない。 (5) 被控訴人アングス、同フロンティアは、法が一定の資金、労力を投下した先行者の利益を、これにただ乗りする形で模倣する後行者から保護するというものであるとするならば、カスタムパーツについては、その趣旨は当てはまらない、なぜならば、先行者の商品(本体)には、その開発のために資金、労力が投下されている結果、その必要のない後行者の商品に比べ、価格が割高にならざるを得ず、その結果、廉価な模倣品との間において公正な競争が阻害されることになるのに対し、カスタムパーツの場合は、模倣品自体極めて高額であり、その販売によって本体の流通販売を不当に阻害することはなく、公正な競争が害されるという関係になく、かえって、カスタムパーツの販売が、本体の売買を促進するという関係にあるからである、と主張する。 しかしながら、本件において、法2条1項3号による保護の対象となるか否かが問われているのは、被控訴人らがいう本体(控訴人エアソフトガン)ではなく、その部品(独立の商品としての部品)であり、当該部品の流通販売が被控訴人らの行為によって阻害されることが問題なのである。上記被控訴人らの主張は、前提において既に誤っていることが明らかである。 (6) 被控訴人シェリフは、本訴において控訴人が模倣を主張している被控訴人シェリフの商品については、別件関連事件(大阪地方裁判所平成8年(ワ)第8750号事件、大阪高等裁判所平成11年(ネ)第45号事件、最高裁判所平成12年(オ)第540号・同平成12年(受)第441号事件)において争われ、4年以上にわたり審理を重ねた結果、すべての判決において模倣性が否定された、要するに、控訴人エアソフトガンのカスタムパーツが法2条1項3号にいう「同種商品が通常有する形態」に該当するかどうかに関する一連の紛争は、上記判決及び決定を経て確定し、実質的に解決しているものである、したがって、控訴人の本訴における主張は、上記確定判決に抵触するものである、あるいは、これに遮断されて許されない、と主張するが、失当である。 戊第37、39、44号証によれば、別件関連事件においては、被控訴人シェリフが、控訴人エアソフトガンのカスタムパーツを製造販売していたことに対し、控訴人が被控訴人シェリフの販売先に対し、控訴人エアソフトガンのカスタムパーツの取扱いについて告知行為を行ったことが、不正競争防止法によって規制される形態模倣品であるとの虚偽の事実を内容とし、被控訴人シェリフの営業上の信用を害し、営業誹謗の不正競争行為に該当するとして、被控訴人シェリフが控訴人に対し上記行為の中止、損害賠償、謝罪広告を求めた事案であること、第一審、第二審において、被控訴人シェリフ部品が控訴人商品の形態を模倣したものではないと認定され、これを前提に、控訴人の上記告知行為は営業誹謗行為に当たると判断されたこと、その判断が確定したことが認められる。そうすると、別件関連事件において、被控訴人シェリフの商品が控訴人商品の形態を模倣したものではないと認定されたとしても、その認定は、あくまで、控訴人の上記告知行為が営業誹謗行為に当たるかどうかを判断する前提としてなされたにすぎないものであって、本件におけるのとは、訴訟における位置付けを異にするものであることが明らかである(訴訟物が相違していることは、論ずるまでもないことである)。 しかも、弁論の全趣旨によれば、別件関連事件においては、被控訴人シェリフが平成8年8月に、本訴においては、控訴人が同年10月に、相次いで大阪地方裁判所あるいは東京地方裁判所に訴えの提起をし、それぞれ独立して訴訟が進行していたものの、後者において当事者が控訴人の被った損害の額の立証に関する攻撃防禦を尽くしている間に、前者が先に確定するに至ったことが認められ、そうであるならば、前者が確定したからといって、後者について、事件のむし返しによる信義則違反などといった問題が生じる余地がないことは、いうまでもないところである。 戊第44号証によれば、最高裁判所は、平成12年(オ)第540号・同平成12年(受)第441号事件について、「一 上告について 民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは、民訴法三一二条一項又は二項所定の場合に限られるところ、本件上告理由は、違憲及び理由の食違いをいうが、その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであって、明らかに右各項に規定する事由に該当しない。二 上告受理申立てについて 本件申立ての理由によれば、本件は、民訴法三一八条一項の事件に当たらない。」と説示しているのみであって、営業誹謗行為に当たるかどうかを判断する前提としての形態模倣の存否についても、何らの判断も示していないことが明らかである。 控訴人シェリフの上記主張は、失当というほかない。 2 被控訴人ら商品が控訴人商品の形態を模倣した商品であるかどうかについて 被控訴人ら商品が、控訴人エアソフトガンを構成する部品である控訴人アウターバレル、同チェンバーカバー、同ハンマー、同フローティングバルブの形態を模倣した商品であるかどうかについて検討する。 法2条1項3号にいう「模倣」とは、既に存在する他人の商品の形態をまねて、これと全く同一又は実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいうものであり、ここに「商品の形態」とは、商品の形状、模様、色彩、光沢などといった外観上認識することができるものの総体をいうものであり、また、実質的に同一であるとは、社会通念上、需要者がそっくりだと認識し得るほどに客観的に酷似していることをいうものと解するのが相当である。全く同一の形態の商品のみではなく、上記の意味で実質的に同一である商品を対象に加えるのは、前述したとおり、法2条1項3号が、開発に時間も費用もかけず、先行投資した他人の商品形態を模倣した商品を製造販売して、投資に伴う危険負担を回避して市場に参入しようとすることは、公正とはいえないことに着目して、そのような行為を不正競争行為として禁ずることにしたものと解するならば、問題とされる商品の形態に、既に存在する他人の商品の形態と相違するところがあっても、その相違がわずかな改変に基づくものであって、酷似していると評価できるような場合には、実質的に同一の形態であるとして、これを同一の場合と同じに扱うのが、合理的であるというべきであるからである。 (1) 被控訴人アングスについて(アングス商品6ないし8) 甲第2号証、検甲第27ないし29号証によれば、アングス商品6ないし8は、その形態は、それぞれ、別紙アングス商品目録6ないし8のとおりであり、控訴人チェンバーカバーのカスタムパーツであって、控訴人チェンバーカバーと交換して、控訴人エアソフトガンに組み込むことができるものであると認められる。アングス商品6ないし8は、形状が控訴人チェンバーカバーと同一であり、色彩の点において、控訴人チェンバーカバーが、雄ねじ部の内外面は黒色に塗装され、その他は銀色に塗装されているのに対し、アングス商品6が全体に黒色、アングス商品7及び8が全体に銀色となっている点で相違している。アングス商品6ないし8の上記相違は、わずかな改変にすぎず、控訴人チェンバーカバーの形態的な特徴が色彩にあるわけではないことからすれば、依然として、控訴人チェンバーカバーの形態と実質的に同一であると評価し得る範囲を出ないものというべきである。 アングス商品6ないし8は、いずれも、控訴人チェンバーカバーを模倣したものというべきである。 (2) 被控訴人フロンティアについて (ア) フロンティア商品4 甲第3号証、検甲第14号証によれば、フロンティア商品4は、その形態は別紙フロンティア商品目録A(あるいはB)の4のとおりであり、控訴人アウターバレルのカスタムパーツであって、交換して控訴人エアソフトガンに組み込むことができるものであることが認められる。フロンティア商品4は、全長が控訴人アウターバレルより長く(約1.3倍)、銃口側の端部の外側に段差がなく、同端部の内周に凹凸がない点で相違し、その余は、同じ形状、寸法を有している。フロンティア商品4は、控訴人アウターバレルのカスタムパーツとして製造販売されているのであるから、控訴人アウターバレルの形態と基本的な形状が共通していることは明らかである。 フロンティア商品4は、上記のとおり、控訴人アウターバレルの形態と基本的な形状が共通しているものの、全長が控訴人アウターバレルより長い(約1.3倍)という点に着目すると、この相違点は、最も注意を引くところについての相違であるから、同商品は、この相違によって、需要者に控訴人アウターバレルとかなり異なった印象を与え、相応の形態的な特徴があるものとなっているものということができる。 そうすると、フロンティア商品4の形態は、控訴人アウターバレルと酷似していると評価できないから、実質的に同一の形態ということはできず、控訴人アウターバレルを模倣したものとはいえないというべきである。 (イ) フロンティア商品5及び6 甲第3号証、検甲第17、31号証によれば、フロンティア商品5及び6は、その形態は、それぞれ別紙フロンティア商品目録A(あるいはB)の5、6のとおりであり、控訴人チェンバーカバーのカスタムパーツであって、控訴人チェンバーカバーと交換して、控訴人エアソフトガンに組み込むことができるものであると認められる。フロンティア商品5は、形状において、側面に楕円形の大きな穴が設けられている点(控訴人チェンバーカバーにおいては、このような穴が存在しない。)で、色彩の点において、フロンティア商品5が全体に灰色となっている点(控訴人チェンバーカバーにおいては、雄ねじ部の内外面は黒色に塗装され、その他は銀色に塗装されている。)で、控訴人チェンバーカバーと相違し、その余は同一である。フロンティア商品6は、形状が控訴人チェンバーカバーと同一であり、色彩において、全体に黒色となっている点で相違している。 フロンティア商品5及び6の控訴人チェンバーカバーとの上記相違は、わずかな改変にすぎず、控訴人チェンバーカバーの形態的な特徴が色彩にあるわけではないこと、側面の楕円形の大きな穴によって格別の形態的な特徴がもたらされるといえないことからすれば、依然として、控訴人チェンバーカバーの形態と実質的に同一であると評価し得る範囲を出ないものというべきである。 フロンティア商品5及び6は、いずれも、控訴人チェンバーカバーを模倣したものというべきである。 (ウ) フロンティア商品8 甲第3号証、検甲第9号証によれば、フロンティア商品8は、その形態は別紙フロンティア商品目録A(あるいはB)の8のとおりであり、控訴人ハンマーのカスタムパーツであり、控訴人ハンマーと交換して、控訴人エアソフトガンに組み込むことができると認められる。フロンティア商品8は、形状及び色彩において、控訴人ハンマーと同一であるということが許されるほどに酷似している(控訴人ハンマーは、一見、三つの穴があるようにみえるけれども、そのうちの二つは、いったん穴を開けた後に埋めて元に戻されており、残りの一つは貫通穴である。上記の埋めて元に戻された部分は、色彩が相違している以外には、穴がないのと変わりがない。フロンティア商品8に、上記の埋めて元に戻された部分に相当するものがないとしても、両者が酷似しているという上記評価が、それによって影響を受けることはないというべきである。)。 フロンティア商品8は、控訴人ハンマーを模倣したものというべきである。 (3) 被控訴人三ツ星商店 (ア) 三ツ星商品4 三ツ星商品4は、フロンティア商品4と同じ商品である。前記(2)(ア)で述べたとおり、控訴人アウターバレルを模倣したものとはいえない。 (イ) 三ツ星商品5及び6 三ツ星商品5はフロンティア商品5と、三ツ星商品6はフロンティア商品6と、それぞれ同じ商品である。前記(2)(イ)で述べたとおり、いずれも控訴人チェンバーカバーを模倣したものというべきである。 (ウ) 三ツ星商品8 三ツ星商品8は、フロンティア商品8と同じ商品である。前記(2)(ウ)で述べたとおり、控訴人ハンマーを模倣したものというべきである。 (エ) 被控訴人三ツ星商店は、控訴人とホビーフィックスとの間において、その他の互換性部品を含め、「他に何らの債権債務のないことを確認する」との和解が成立しているから、少なくとも当時存在していた同社の製品については、控訴人は、流通を承認したものであり、あるいは、損害の補填がなされたものであり、同製品の流通につき模倣等を理由とする損害賠償の請求はできない、三ツ星商品6は、製造者がホビーフィックスであるから、これらの商品については、控訴人の被控訴人三ツ星商店に対す賠償請求額から除外されるものである旨主張する。 甲第13号証によれば、控訴人とホビーフィックス他2名との間の訴訟として係属していた東京地方裁判所平成7年(ワ)第15012号事件において、平成8年7月24日、控訴人の製造販売していたWAベレッタM92FSブローバックモデルのエアソフトガン及び控訴人エアソフトガンのカスタムパーツを製造し、販売し又は販売のために展示しない、金型を廃棄する、和解金を支払うなどの合意を含む裁判上の和解が成立したことが認められる。 しかし、上記和解調書を検討しても、控訴人が、和解期日の当時に存在していたホビーフィックスのカスタムパーツについて、流通することを承認したとか、あるいは、上記カスタムパーツのいっさいについて、同和解によって損害の補填がなされたものとするとかの意味のことを読み取ることはできない。被控訴人三ツ星商品の主張は、失当である。 (4) 被控訴人A (ア) A商品2 A商品2はフロンティア商品8と同じ商品である。前記(2)(ウ)に述べたとおり、いずれも控訴人ハンマーを模倣したものというべきである。 (イ) A商品3 甲第5号証、検甲第10号証によれば、A商品3は、その形態は別紙A商品目録A(あるいはB)の3のとおりであり、控訴人ハンマーのカスタムパーツであって、控訴人ハンマーと交換して、控訴人エアソフトガンに組み込むことができることが認められる。A商品3は、形状において、指掛け部がその他の部分の厚みより若干厚くなっており、また、外表面が網目状の細かい凹凸となっている点で、控訴人ハンマーと相違し、その余は同一である。A商品3は、上記相違点によって、需要者に控訴人ハンマーとは異なった印象を与え、相応の形態的な特徴があるものというべきである。 そうすると、A商品3の形態は、控訴人ハンマーと酷似していると評価することができないから、控訴人ハンマーを模倣したものとはいえないというべきである。 (5) 被控訴人シェリフ (ア) シェリフ商品1ないし4 甲第6号証、検甲第11ないし13号証によれば、シェリフ商品1ないし3は、その形態は別紙シェリフ商品目録A(あるいはB)の1ないし3のとおりであり、控訴人アウターバレルのカスタムパーツであって、交換して控訴人エアソフトガンに組み込むことができるものであることが認められる。 シェリフ商品1は、全長が控訴人アウターバレルより長く(約1.3倍)、銃口側の端部の外側に段差がなく、同端部の内周に凹凸がない点で相違し、その余は、同じ形状を有してを有しており、また、色彩において、全体に黒色となっている点(控訴人アウターバレルは銀色をしている。)で相違している。そうすると、前記(2)(ア)と同様に、シェリフ商品1の形態は、控訴人アウターバレルと酷似していると評価することができないから、控訴人アウターバレルを模倣したものとはいえないというべきである。 シェリフ商品2は、控訴人アウターバレルと対比すると、形状において、銃口側の端部の外側に段差がなく、同端部の内周に凹凸がない点で相違し、その余は同じであり、また、色彩において、全体に黒色となっている点で相違している。 シェリフ商品2の上記相違は、控訴人アウターバレルに存する銃口側の端部の外側の段差及び内周の凹凸を省いたというだけのわずかな改変にすぎず、控訴人アウターバレルの形態的な特徴が色彩にあるわけではないことからすれば、依然として、控訴人アウターバレルの形態と実質的に同一であると評価し得る範囲を出ないものというべきである。 シェリフ商品2は、控訴人アウターバレルを模倣したものというべきである。 シェリフ商品3は、控訴人アウターバレルと対比すると、形状において、銃口側の端部の外側に段差がなく、同端部の内周に凹凸がない点で相違し、その余は同じであり、また、色彩も同じである。 シェリフ商品3の上記相違は、シェリフ商品2と同様、わずかな改変にすぎず、控訴人アウターバレルの形態と実質的に同一であると評価し得る範囲を出ないものというべきである。 シェリフ商品3は、控訴人アウターバレルを模倣したものというべきである。 シェリフ商品4は、フロンティア商品4と同じ商品である。前記(2)(ア)で述べたとおり、控訴人アウターバレルを模倣したものとはいえない。 (イ) シェリフ商品5及び6 甲第6号証、検甲第15、16号証によれば、シェリフ商品5及び6は、その形態は別紙シェリフ商品目録A(あるいはB)の5ないし7のとおりであり、控訴人チェンバーカバーのカスタムパーツであって、控訴人チェンバーカバーと交換して、控訴人エアソフトガンに組み込むことができるものであることが認められる。 シェリフ商品5は、控訴人チェンバーカバーと対比すると、形状において、側面に楕円形の大きな穴が設けられている点で、色彩において、全体に黒色となっている点で相違し、その余は同一である。シェリフ商品5の上記相違は、格別に意味のない穴を開けたというわずかな改変にすぎず、控訴人チェンバーカバーの形態的な特徴が色彩にあるわけではないこと、側面の楕円形の大きな穴によって格別の形態的な特徴がもたらされるといえないことからすれば、依然として、控訴人チェンバーカバーの形態と実質的に同一であると評価し得る範囲を出ないものというべきである。 シェリフ商品5は、控訴人チェンバーカバーを模倣したものというべきである。 シェリフ商品6は、控訴人チェンバーカバーと対比すると、形状において、側面に楕円形の大きな穴が設けられている点で、色彩において、全体に灰色となっている点で相違し、その余は同一である。シェリフ商品6の上記相違は、シェリフ商品5の場合と同様、わずかな改変にすぎず、控訴人チェンバーカバーの形態的な特徴が色彩にあるわけではないこと、側面の楕円形の大きな穴によって格別の形態的な特徴がもたらされるといえないことからすれば、依然として、控訴人チェンバーカバーの形態と実質的に同一であると評価し得る範囲を出ないものというべきである。 シェリフ商品6は、控訴人チェンバーカバーを模倣したものというべきである。 (ウ) シェリフ商品8ないし10 甲第6号証、検甲第18ないし20号証によれば、シェリフ商品8ないし10は、その形態は別紙シェリフ商品目録A(あるいはB)の8ないし10のとおりであり、控訴人ハンマーのカスタムパーツであって、控訴人ハンマーと交換して、控訴人エアソフトガンに組み込むことができるものであることが認められる。 シェリフ商品8が、形状及び色彩において、控訴人ハンマーと同一であるということが許されるほどに酷似していることは、フロンティア商品8について(2)(ウ)に述べたのと同様である。 シェリフ商品9は、控訴人ハンマーと対比すると、形状において、指掛け部の先端がV状となっている点で相違し(控訴人ハンマーはU状である。)、その余は同一であり、色彩においても同一である。シェリフ商品9の上記相違は、わずかな改変にすぎず、先端形状の相違によって格別の形態的な特徴がもたらされるといえないことからすれば、依然として、控訴人チェンバーカバーの形態と実質的に同一であると評価し得る範囲を出ないものというべきである。 シェリフ商品10は、控訴人ハンマーと対比すると、形状において、中間部に2個の穴が設けられている点で相違し、その余は同一であり、色彩においても同一である。シェリフ商品10の上記相違は、わずかな改変にすぎず、中間部の2個の穴によって格別の形態的な特徴がもたらされるといえないことからすれば、依然として、控訴人チェンバーカバーの形態と実質的に同一であると評価し得る範囲を出ないものというべきである。 シェリフ商品8ないし10は、いずれも、控訴人チェンバーカバーを模倣したものというべきである。 (エ) シェリフ商品11 甲第6号証、検甲第21号証によれば、シェリフ商品11は、その形態は別紙シェリフ商品目録A(あるいはB)の11のとおりであり、控訴人フローティングバルブのカスタムパーツであって、控訴人フローティングバルブと交換して、控訴人エアソフトガンに組み込むことができるものであることが認められる。 シェリフ商品11は、控訴人フローティングバルブと対比すると、形状において、円盤状の部分の外周がゴムとなっており、3枚の羽根の部分の羽の長さが控訴人フローティングバルブのそれの約3分の1程度しかない点で相違している。シェリフ商品11は、上記相違点によって、需要者に控訴人フローティングバルブとは異なった印象を与え、相応の形態的な特徴があるものというべきである。 そうすると、シェリフ商品11の形態は、控訴人フローティングバルブと酷似していると評価できないから、控訴人フローティングバルブを模倣したものとはいえないというべきである。 3 被控訴人らの故意又は過失について (1) 甲第22、30、31、33、34号証、乙第3号証によれば、模造拳銃は、遅くとも平成7年6月ころには、新聞、テレビ等でニュースとして取り上げられ、エアソフトガンについても、改造拳銃となりやすい物に当たるとして警察からの厳しい視線にさらされていたこと、そのころ、日本遊技銃協同組合(日本遊技銃協同組合に所属している遊技銃を製造している業者は、平成8年当時、30社前後であった。)は、過度の金属製部品を使用しないように、組合内部で自主規制を行っており、模型ホビー業界の業界誌を通じて、過度の金属製パーツを使用しないように呼びかけていたこと、通商産業省は、平成7年9月、モデルガン、エアソフトガン等の改造拳銃となりやすい物についての取り締まり、国民への広報、啓発等を目的とし、内閣に銃器対策推進本部を設置し、同月28日付けで、日本遊技銃協同組合に対し、上記目的に沿って行政指導をしていたこと、平成7、8年当時、控訴人代表者は、日本遊技銃協同組合の理事長の地位にあって、日本における遊技銃製造販売業を指導し、通商産業省等の行政機関の行政指導に対し、同組合を代表して交渉に当たるなどしていたこと、控訴人は、平成5年法律第47号の法改正により、形態模倣行為が規制されることになったことを知り、自社で開発したベレッタM92FSブローバックモデルエアソフトガンのカスタムパーツが控訴人の同意もなく流通しているのをやめさせて、上記カスタムパーツの流通を自社の管理下に置こうと考え、平成6年6月ころ、取引先に対して、上記エアソフトガンのカスタムパーツを控訴人の承諾なく製造販売することは違法行為に当たることなどを記載した警告書を送付したこと、控訴人は、平成7年7月ころ、千葉県に所在するホビーフィックス、神奈川県に所在する有限会社千里を被告として、ベレッタM92FSブローバックモデルエアソフトガンのカスタムパーツの製造販売の差止等を求めて訴えを提起したことが認められる。 上記認定の事実によれば、本件で問題となる3年間をとってみた場合、控訴人エアソフトガンを含めた控訴人の製造するエアソフトガンに係るカスタムパーツを取り扱っている業者においては、控訴人が、自社製エアソフトガンのカスタムパーツに関して臨んでいた厳しい姿勢を知っていたものということができる。そして、上記期間内において、被控訴人らを含むこれらの業者に、控訴人エアソフトガンのカスタムパーツは法が販売を禁じた模倣品に該当するものではないとの確信を持たせたであろうことをうかがわせる資料は、本件全証拠を検討しても見いだすことができない。 そうだとすると、被控訴人らは、自己の販売している、控訴人エアソフトガンのカスタムパーツが、法が販売を禁止している模倣品に該当するとの確定的な認識を有していたとはいえないとしても、模倣品に該当するか否かについての確定的な認識を有するには至らないままに、たとい該当するものであったとしても販売を行うとの決断をして、この決断の下に、あえて、販売し続け、その結果、法2条1項3号に違反して控訴人の営業上の利益を侵害したと認めることができるから、被控訴人らは、いずれも、各自の法2条1項3号違反行為について未必的に故意があったものというべきである。 (2) 被控訴人フロンティアは、仮に、フロンティア商品が控訴人商品の形態を模倣したものであるとしても、同被控訴人は、専門的知識を有しない小売店であり、これが模倣商品であることにつき善意であり、かつ、知らないことに重過失もなかったから、不正競争防止法所定の適用除外事由があり、同被控訴人は損害賠償義務を負わない旨主張している。 しかしながら、被控訴人フロンティアが模倣商品であることにつき善意であるといえないことは、上述したとおりである。 被控訴人フロンティアの上記主張は、採用できない。 (3) 被控訴人Aは、控訴人代表者が、自ら、被控訴人Aの商品の精度を賞賛し、その製造を推奨していたから、被控訴人AのA商品の販売については、控訴人の同意があった旨主張する。 甲第22、29号証、丁第4号証によれば、控訴人は、平成5年12月ころから、控訴人エアソフトガンに先だって、ベレッタM92FSのエアソフトガンを発売していたこと、被控訴人Aは、同エアソフトガンのカスタムパーツを製造販売しており、控訴人は、これを黙認していたこと、ところが、被控訴人Aが、鉄製のハンマーやアウターバレルを製造販売していることを知った控訴人代表者は、平成6年5月ころ、厳しく抗議をし、これに対して、被控訴人Aは、同月16日付けで、控訴人に対し、「御社のM92FSガスブローバック式ガスガンのカスタムパーツを、弊社は、御社の承認を受けずに生産して参りました。ご指摘のありましたアウターバレルとハンマーは直ちに生産を中止いたします。」との内容の詫び状を送ったことが認められる。そして、本件全証拠を検討しても、控訴人が、被控訴人Aに対し、A商品1ないし3の製造に同意していたことをうかがわせる資料を見いだすことができない。 上記認定によれば、控訴人が、被控訴人Aによる、A商品1ないし3の製造に同意していたといえないことは明らかである。被控訴人Aの上記主張は、採用できない。 (4) 被控訴人三ツ星商店、同A及び同シェリフは、控訴人は、平成5年法律第47号による全部改正後の法が施行された平成6年5月1日以降も、さらには本件訴訟の提起後も、その店舗で被控訴人らの商品を販売しており、控訴人代表者もこのことを認識していた、したがって、仮に被控訴人らの商品が控訴人商品の形態を模倣した商品であったとしても、被控訴人らがこれを販売することを承諾していたものと評価できるから、被控訴人らによる模倣行為の違法性は阻却される旨主張しているが、失当である。 上述してきたとことに照らせば、控訴人が、被控訴人らの行為をしばらく放置していたからといって、そのことから直ちに、控訴人が模倣行為に同意を与えたことにならないことは、明らかというべきである。 4 損害額について (1) 被控訴人アングスの行為に基づく損害について (ア) 被控訴人アングスによるアングス商品6ないし8の販売行為は、上記認定のとおり、法2条1項3号に該当し、かつ、故意又は過失が認められるから、同被控訴人には、上記販売行為により控訴人に負わせた損害を賠償すべき義務がある。 (イ) 控訴人は、被控訴人アングスの販売するアングス商品6について、同被控訴人が文書提出命令に従わないから、民事訴訟法224条1項、3項により、当該文書の記載に関する控訴人主張、すなわち、被控訴人アングスがアングス商品6を2000個製造販売したことを真実であると認めるべきである旨主張する。 被控訴人アングスがアングス商品6を販売していたことは、同被控訴人自身が認めるところである。しかしながら、当裁判所に命じられて提出した文書の中に、アングス商品6、すなわち、「こくいんくん」と称せられるチェンバーカバーの伝票帳簿類がないことは、弁論の全趣旨により明らかである。 被控訴人アングスは、仕入れに関する納品書中には、「チェンバーカバー こくいんくん」が「チェンバーカバー」として散在する旨主張する。 しかしながら、甲第8号証によれば、控訴人の従業員が、平成8年7月7日、被控訴人アングスの立川本店で、控訴人エアソフトガンのカスタムパーツを購入したとき、店員が作成した商品の明細には、「こくいんくん GM」と記載されていたことが認められ、同事実によれば、被控訴人アングスの内部においては、アングス商品6を「こくいんくん」と称していたことが明らかである。また、前記2(1)に認定したとおり、アングス商品6は全体に黒色であるのに対し、アングス商品7及び8は全体に銀色となっている点で色彩が明らかに異なっているのであるから、被控訴人アングスが、アングス商品6とアングス商品7及び8とを「チェンバーカバー」の名の下に一括して取り扱っていたとは考えにくい。 そうすると、被控訴人アングスは、アングス商品6に関する伝票帳簿類を提出しておらず、当裁判所の文書提出命令に従っていないものというべきである。 しかしながら、被控訴人アングスがアングス商品6を2000個製造販売したとする控訴人の主張は、本件全証拠からうかがわれる控訴人エアソフトガンのカスタムパーツの流通状況、被控訴人アングスの営業内容を考えると著しく不自然であり、控訴人の上記主張を全面的に真実であるとすることに躊躇せざるを得ない。 当裁判所は、弁論の全趣旨から認定される被控訴人アングスの営業状況、同業者である被控訴人フロンティア、同三ツ星商店との営業規模の比較、その他の諸事情を考慮し、民事訴訟法248条の法意の下に同法224条1項を適用して、控訴人の主張は、本件で問題となる3年間(平成6年9月22日から平成9年9月21日まで)に1000個販売したという限度で真実であると認めることとする。 (ウ) 甲第8、84、88号証によれば、被控訴人アングスは、平成7年10月13日から平成8年5月1日までの間に、アングス商品7を105個、同8を163個販売したこと、これらの販売価格は、アングス商品6が1個当たり3980円、同8が1個当たり2800円であり、アングス商品7については、同4とセットにして1万2000円であったことが認められる。 アングス商品7は、前述したとおり、形態上では同8(2800円)に近いこと、同4は1個当たり9500円で販売されていたこと(甲第8号証)からすれば、アングス商品7の販売価格は、1個当たり2731円(1万2000円×2800円/(2800円+9500円))となる。 甲第81号証の1ないし3によれば、平成7年度ないし平成9年度の売上高は、合計7億7604万3000円、売上総利益は、合計2億3693万9000円、同期間の販売費及び一般管理費は合計1億3105万円(役員報酬は、販売費及び一般管理費に含めない。)、同期間の営業利益合計1億0588万9000円となることが認められ、利益率は13.64%となる。 以上によれば、アングス商品6に係る利益は54万2872円(3980円×1000個×13.64%)、同7に係る利益は3万9113円(2731円×105個×13.64%)、同8に係る利益は6万2252円(2800円×163個×13.64%)、合計64万4237円となる。 (2) 被控訴人フロンティアの行為に基づく損害について (ア) 被控訴人フロンティアによるフロンティア商品5、6及び8の販売行為は、上記認定のとおり、法2条1項3号に該当し、かつ、故意又は過失が認められるから、同被控訴人には、上記販売行為により控訴人に負わせた損害を賠償すべき義務がある。 (イ) 控訴人は、被控訴人フロンティアの販売するフロンティア商品5、6及び8について、同被控訴人が文書提出命令に従わないから、民事訴訟法224条1項ないし3項により、当該文書の記載に関する控訴人主張、すなわち、被控訴人フロンティアがフロンティア商品5を400個、同6を800個、同8を800個販売したことを真実であると認めるべきである旨主張する。 甲第87号証からは、被控訴人フロンティアは、平成8年2月21日から同年4月27日までの間に、フロンティア商品5は販売しておらず、同6を3個、同8を6個販売したとの記載を読み取ることができる。ところが、文書提出命令にもかかわらず、その他の期間の控訴人商品の販売を裏付ける資料を提出していない。 甲第86号証の1ないし3によれば、被控訴人フロンティアの平成7年4月から平成10年3月までの売上高の合計は、23億3787万5000円であって、同期の被控訴人アングスの約3倍の売上高であることが認められる。フロンティア商品5及び6と同種のアングス商品6ないし8の前記販売状況からすれば、甲第87号証によるフロンティア商品の販売数量は、合理的に推測されるものに比べて少なすぎるというべきである。 そうすると、被控訴人フロンティアは、当裁判所の文書提出命令に従っていないものというべきである。 当裁判所は、民事訴訟法224条1項により、控訴人の主張を真実と認め、被控訴人フロンティアは、本件で問題となる3年間にフロンティア商品5を400個、同6を800個、同8を800個販売したものと認めることとする。 甲第63号証によれば、フロンティア商品5及び6の販売価格は、1個当たり2800円であること、同8のそれは、少なくとも1個当たり5220円であることが認められる。 甲第86号証の1ないし3によれば、平成7年4月から平成10年3月までの売上高合計23億3787万5000円、売上総利益合計5億6346万4000円、同期間の販売費及び一般管理費は合計3億3756万3000円(役員報酬は、販売費及び一般管理費に含めない。)、同期間の営業利益合計2億2590万1000円となり、利益率は9.66%となる。 以上によれば、フロンティア商品5に係る利益は10万8192円(2800円×400個×9.66%)、同6に係る利益は21万6384円(2800円×800個×9.66%)、同8に係る利益は40万3401円(5220円×800個×9.66%)、合計72万7977円となる。 (3) 被控訴人三ツ星商店の行為に基づく損害について (ア) 被控訴人三ツ星商店による三ツ星商品5、6及び8の販売行為は、上記認定のとおり、法2条1項3号に該当し、かつ、故意又は過失が認められるから、同被控訴人には、上記販売行為により控訴人に負わせた損害を賠償すべき義務がある。 (イ) 控訴人は、被控訴人三ツ星商店の販売する三ツ星商品5、6及び8について、同被控訴人が文書提出命令に従わないから、民事訴訟法224条1項、3項により、当該文書の記載に関する控訴人主張、すなわち、被控訴人三ツ星商店が三ツ星商品5を3000個、同6を1500個、同8を2000個販売したことを真実であると認めるべきであるとし、併せて、被控訴人三ツ星商店は、大手玩具問屋であり、玩具銃の商圏においても、大きなシェアを有しており、控訴人との取引では、平成6年9月から平成8年7月までの間に、同期間の控訴人の控訴人エアソフトガン出荷数量(7万2942丁)の15.9%(1万1630丁)を占めていたから、被控訴人三ツ星商店は、上記割合に見合う数量の控訴人エアソフトガン向けのカスタムパーツを販売していたと推認される旨主張する。 被控訴人三ツ星商店は、当裁判所の文書提出命令に対して、何らの伝票帳簿類をも提出していないことが記録上明らかであり、同被控訴人は、当裁判所の文書提出命令に従っていないことが明らかである。 当裁判所は、民事訴訟法224条1項の規定により、控訴人の主張を真実と認め、被控訴人三ツ星商店は、本件で問題となる3年間に三ツ星商品5を3000個、同6を1500個、同8を2000個販売したものと認めることとする。 甲第35号証の1ないし21、甲第36号証によれば、被控訴人三ツ星商店は、三ツ星商品5あるいは6を1個当たり4200円、同8を1個当たり2580円で販売していたことが認められる。 戊第42号証の4によれば、被控訴人三ツ星商店は、被控訴人シェリフから、ハンマーのカスタムパーツを1個当たり2150円で仕入れていることが認められ、上記のとおり同種商品を1個当たり2580円で販売しているわけであるから、利益率20%((2580円−2150円)/2150円)となる。 以上によれば、三ツ星商品5に係る利益は252万円(4200円×3000個×20%)、同6に係る利益は126万円(4200円×1500個×20%)、同8に係る利益は103万2000円(2580円×2000個×20%)、合計481万2000円となる。 (4) 被控訴人Aの行為に基づく損害について (ア) 被控訴人AによるA商品2の販売行為は、上記認定のとおり、法2条1項3号に該当し、かつ、故意又は過失が認められるから、同被控訴人には、上記販売行為により控訴人に負わせた損害を賠償すべき義務がある。 (イ) 控訴人は、被控訴人Aの販売するA商品2について、被控訴人Aが文書提出命令に従わないから、民事訴訟法224条1項ないし3項により、当該文書の記載に関する控訴人主張、すなわち、被控訴人AがA商品2を3500個販売したことを真実であると認めるべきである旨主張する。 被控訴人Aは、本件紛争が深刻さを増したので、その段階で、マニアや問屋に迷惑をかけることをおそれ、関連文書はすべて廃棄処分したと述べており、また、当裁判所の文書提出命令に対して、何らの伝票及び帳簿類をも提出していないことが記録上明らかである。同被控訴人には、民事訴訟法224条1項又は2項所定のいずれかの事由が存在することが明らかである。 しかしながら、被控訴人AがA商品2を3500個製造販売したとする控訴人の主張は、本件全証拠からうかがわれる控訴人エアソフトガンのカスタムパーツの流通状況、被控訴人Aの営業内容を考えると著しく不自然であり、控訴人の上記主張を全面的に真実であるとすることに躊躇せざるを得ない。 当裁判所は、弁論の全趣旨から認定される被控訴人Aの営業状況、同業者である被控訴人シェリフとの営業規模の比較、その他の諸事情を考慮し、民事訴訟法248条の法意の下に同法224条1項あるいは2項を適用して、控訴人の主張は、本件で問題となる3年間にA商品2を2000個販売したという限度で真実であると認めることとする。 丁第17号証によれば、A商品2の販売価格は1個当たり2900円、原価は1個当たり2030円であったことが認められ、その余の一般経費については、これを認定する証拠がない。 そうすると、被控訴人Aが得た利益は、174万円((2900円−2030円)×2000個)となる。 (5) 被控訴人シェリフの行為に基づく損害について (ア) 被控訴人シェリフによるシェリフ商品2、3、5、6、8ないし10の販売行為は、前記認定のとおり、法2条1項3号に該当し、かつ、故意又は過失が認められるから、同被控訴人には、上記販売行為により控訴人に負わせた損害を賠償すべき義務がある。 (イ) 控訴人は、被控訴人シェリフが文書提出命令に従わないから、民事訴訟法224条1項により、当該文書の記載に関する控訴人主張、すなわち、被控訴人シェリフがシェリフ商品2を3500個、同3を3000個、同5、6を合計7643個、同8を4000個、同9を2000個、同10を2500個販売したことを真実であると認めるべきであるとする。 戊第40ないし43号証によれば、被控訴人シェリフは、平成6年12月から平成8年3月までに、問屋又は小売店に対し、シェリフ商品2を合計334個、同3を合計287個、同5、6を合計1067個、同8を合計548個、同9を合計71個、同10を合計115個販売したことが認められる。 甲第83号証、戊第46号証によれば、被控訴人シェリフの平成6年10月から平成9年9月までの総売上高は、合計1億8669万1000円であり、そのうち卸売りの分は1億0547万8000円、店頭販売、通信販売、イベント販売等の直販による売上は8121万3000円であったこと、後者の総売上高に対する比率は、43.5%であることが認められる。 被控訴人シェリフは、当裁判所の文書提出命令に対して、直販に関する伝票帳簿類を提出していないことが記録上明らかである。同被控訴人は、当裁判所の文書提出命令に従っていないことが明らかである。 しかしながら、被控訴人シェリフがシェリフ商品2を3500個、同3を3000個、同5、6を合計7643個、同8を4000個、同9を2000個、同10を2500個販売したとする控訴人の主張は、本件全証拠から窺われる控訴人エアソフトガンのカスタムパーツの流通状況、被控訴人シェリフの営業内容を考慮すると不自然であり、控訴人の上記主張を全面的に真実であるとすることに躊躇せざるを得ない。 当裁判所は、弁論の全趣旨から認定される被控訴人シェリフの営業状況、同業者である被控訴人Aとの営業規模の比較、カスタムパーツ販売業者である被控訴人アングス、同フロンティア、同三ツ星商店の販売状況との比較、その他の諸事情を考慮し、民事訴訟法248条の法意の下に同法224条1項を適用して、控訴人の主張は、被控訴人シェリフが、本件で問題となる3年間に、シェリフ商品2を1500個、同3を1000個、同5、6を合計2000個、同8を1000個、同9を1000個、同10を1500個販売したという限度で真実であると認めることとする。 戊第40ないし42号証の各1ないし7によれば、被控訴人シェリフは、シェリフ商品2又は3(アウターバレル)とシェリフ商品5又は6(チェンバーカバー)とをセットにして、価格を少なくとも3060円として販売していたこと、また、シェリフ商品8を1個当たり1710円で、同9を1個当たり1935円で、同10を1個当たり2021円で、それぞれ販売していたことが認められる。 弁論の全趣旨によれば、シェリフ商品2又は3を単体で販売した場合の最低販売価格は1125円、シェリフ商品5又は6を単体で販売した場合の最低販売価格は3150円であったことが認められる。 被控訴人シェリフによる、上記推定の販売数量において、セットによるものと、単体によるものとの割合がどのようであったかは不明である。アウターバレルとチェンバーカバーのセットの最低販売価格は3060円であり、アウターバレルとチェンバーカバーとを単体で販売した場合の最低販売価格の比率でアウターバレルとチェンバーカバーのセットの最低販売価格からアウターバレルとチェンバーカバーとの価格を算定すると、前者が805円(3060円×1125円/(1125円+3150円))、後者が2254円(3060円×3150円/(1125円+3150円))となり、これが、シェリフ商品2又は3、シェリフ商品5又は6の最低販売価格となる。 戊第45号証の1ないし3によれば、被控訴人シェリフの平成6年10月から平成9年9月までの売上高合計1億8669万1000円、売上総利益合計1億1411万2000円、同期間の販売費及び一般管理費は合計8183万5000円(役員報酬は、販売費及び一般管理費に含めない。)、同期間の営業利益合計3227万7000円となり、利益率は17.28%となる。 以上によれば、シェリフ商品2及び3に係る利益は34万7760円(805円×2500個×17.28%)、同5及び6に係る利益は77万8982円(2254円×2000個×17.28%)、同8に係る利益は29万5488円(1710円×1000個×17.28%)、同9に係る利益は33万4368円(1935円×1000個×17.28%)、同10に係る利益は52万3843円(2021円×1500個×17.28%)、合計228万0441円となる。 (6) 弁護士費用について 控訴人が、本訴の提起及び遂行のために弁護士である控訴人代理人らを選任したことは当裁判所に顕著である。当裁判所は、本件事案の性質、内容、審理の経緯、訴訟の結果その他諸般の事情を考慮して、被控訴人アングスとの訴訟に関し控訴人に生じた弁護士費用のうち10万円、被控訴人フロンティアとの訴訟に関し控訴人に生じた弁護士費用のうち10万円、被控訴人三ツ星商店との訴訟に関し控訴人に生じた弁護士費用のうち50万円、被控訴人Aとの訴訟に関し控訴人に生じた弁護士費用のうち20万円、被控訴人シェリフの訴訟に関し控訴人に生じた弁護士費用のうち30万円をもって、賠償の対象となる損害と認める。 5 結論 以上検討したところによれば、控訴人の本訴請求は、@被控訴人アングスに対し、74万4237円及び内金64万4237円に対する平成9年4月19日から支払済みまで、内金10万円に対する平成13年1月30日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を、A被控訴人フロンティアに対し、82万7977円及び内金72万7977円に対する平成9年4月19日から支払済みまで、内金10万円に対する平成13年1月30日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を、B被控訴人三ツ星商店に対し、531万2000円及び内金481万2000円に対する平成9年4月19日から支払済みまで、内金50万円に対する平成13年1月30日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を、C被控訴人Aに対し、194万円及び内金174万円に対する平成9年4月19日から支払済みまで、内金20万円に対する平成13年1月30日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を、D被控訴人シェリフに対し、258万0441円及び内金228万0441円に対する平成9年4月19日から支払済みまで、内金30万円に対する平成13年1月30日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を、それぞれ求める限度で理由があるから、この限度で認容し、その余は理由がないから棄却すべきである。そこで、これと異なる原判決を上記のとおりに変更することとし、訴訟費用の負担について、民事訴訟法67条2項、64条を適用して、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第6民事部 裁判長裁判官 山下和明 裁判官 設樂隆一 裁判官 宍戸充 |
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