判例全文 | ![]() |
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【事件名】CS放送「代ゼミTVネット」の番組無断販売事件 【年月日】平成17年4月27日 東京地裁 平成16年(ワ)26771号 損害賠償請求事件 (口頭弁論終結日 平成17年4月22日) 判決 原告 株式会社日本入試センター 同訴訟代理人弁護士 中森峻治 同 西田育代司 同 今村昭文 同 牧山美香 被告 A 主文 1 被告は、原告に対し、22万円及びこれに対する平成17年2月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は、これを3分し、その2を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実 第1 請求 被告は、原告に対し、100万円及びこれに対する平成17年2月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 当事者の主張 1 請求原因 (1) 原告 原告は、各種教育業務を目的とする株式会社である。 (2) 映画の著作物 ア 原告のデジタル放送事業部部長であったB(以下「B」という。)は、後記本件番組の放送に先立ち、通信衛星放送「SKY PerfecTV」の「代ゼミTVネット」の番組として放送するために、別表著作物欄アないしホの著作物欄記載の番組(以下「本件番組」という。)の製作を企画し、これを撮影、収録した。別表著作物欄アないしシの番組(以下「本件番組ア〜シ」といい、他の番組についても、同様に略称する。)及び本件番組テ〜ホの収録時間は、それぞれ90分で、本件番組ス〜ツの収録時間は、それぞれ60分であった。 イ 本件番組は、@視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、AビデオテープやDVDに記録され、BBが、本件番組のうち、本件番組ア〜シにつき講師Cの講義を、本件番組ス〜ホにつき講師Dの講義をそれぞれ内容とする番組を企画、製作したものであって、映画の著作物に当たる。 (3) 職務著作 ア Bは、原告の発意に基づいて、本件番組を製作した。 イ Bは、原告の上記(1)の業務に従事するものであって、その職務上、本件番組を製作した。 ウ 原告は、本件番組を自己の名義の下に公表した。 (4) 本件違法行為 ア 被告は、本件番組ア〜シを3本のビデオテープに録画し、平成16年3月15日、そのビデオテープ3本をヤフー株式会社が主催するヤフーオークションに出品し、最も高い値段を提示したEに対し、これを販売した。 イ 被告は、本件番組ス〜ツをビデオテープ1本に録画し、同月19日、そのビデオテープ1本を上記オークションに出品し、最も高い値段を提示したFに対し、これを販売した。 ウ 被告は、本件番組テ〜ホを3本のビデオテープに録画し、同月20日、そのビデオテープ3本を上記オークションに出品し、最も高い値段を提示したGに対し、これを販売した。 エ 被告の上記アないしウの行為(以下「本件違法行為」という。)は、いずれも本件番組に係る原告の複製権及び頒布権を侵害する。 (5) 故意 被告は、本件番組に係る原告の複製権及び頒布権を侵害することを知りながら、本件違法行為に及んだ。 (6) 損害 ア 視聴料相当の損害 合計10万8000円 (ア) 民法709条の損害 a(a) 原告は、その後、本件番組ア〜シを再放送した。 (b) 本件違法行為がなければ、Eは、原告に対し、視聴料を支払って上記再放送を視聴したはずである。 (c) Eが上記再放送を視聴しようとした場合、視聴料合計2万4000円を支払う必要があった(1万2000円(視聴料1か月分。以下同じ。)×2か月=2万4000円)。 b(a) 原告は、その後、本件番組ス〜ツを再放送した。 (b) 本件違法行為がなければ、Fは、原告に対し、視聴料を支払って上記再放送を視聴したはずである。 (c) Fが上記再放送を視聴しようとした場合、視聴料合計3万6000円を支払う必要があった(1万2000円×3か月=3万6000円)。 c(a) 原告は、その後、本件番組テ〜ホを再放送した。 (b) 本件違法行為がなければ、Gは、原告に対し、視聴料を支払って上記再放送を視聴したはずである。 (c) Gが上記再放送を視聴しようとした場合、視聴料合計4万8000円を支払う必要があった(1万2000円×4か月=4万8000円)。 (イ) 著作権法114条3項の損害 a 仮に(ア)が認められないとしても、原告が、本件番組に係る複製権、頒布権の行使につき受けるべき金銭の額は、前記収録内容、収録時間等を考慮すると、番組1本当たり3000円が相当である。 b したがって、原告は、被告に対し、著作権法114条3項の適用により、9万円の賠償を請求することができる(3000円×30本=9万円)。 イ 調査費用 74万2000円 (ア) 原告は、原告の著作権の侵害品がヤフーオークションに出品されているか否かの監視作業を継続的に行い、その監視作業を行うために、人件費合計20万円を支出した(人件費1時間2500円×80時間=20万円)。 (イ) 原告は、被告の出品したビデオテープに本件番組が収録されているか否かを確認する作業を行うために、次のとおり、人件費合計27万円を支出した。 人件費1時間2500円×3人×36時間=27万円 (ウ) 原告は、本件違法行為後、原告の担当者が札幌に居住する被告と面談をするために、次のとおり、出張費用合計27万2000円を支出した。 出張1回当たり 6万8000円(航空運賃往復5万2100円+その他の交通費5900円+宿泊費1万円=6万8000円) 6万8000円×4回=27万2000円 (エ) これらの損害は、本件違法行為と相当因果関係のある損害である。 ウ 弁護士費用 15万円 (ア) 原告は、原告代理人らに対し、本件訴訟の提起及び追行を委任し、その報酬として少なくとも15万円の支払を約束した。 (イ) この損害は、本件違法行為と相当因果関係のある損害である。 (7) まとめ よって、原告は、被告に対し、不法行為に基づき、損害金100万円及びこれに対する平成17年2月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 2 被告の対応 被告は、適式の呼出しを受けながら、本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の書面も提出しなかった。 理由 1 本件違法行為等について (1) 被告は、本件口頭弁論に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しないから、請求原因(1)(原告)、(2)(映画の著作物)、(3)(職務著作)、(4)(本件違法行為)及び(5)(故意)の各事実を明らかに争わないものと認め、これを自白したものとみなす。 (2) これらの事実によれば、被告は、本件違法行為により原告に生じた損害を賠償する義務がある。 2 損害について (1) 視聴料相当の損害 ア 民法709条の損害 (ア) 被告は、請求原因(6)ア(ア)aないしcの各(a)(再放送)及び(c)(視聴料)の事実を明らかに争わないから、これを自白したものとみなす。 (イ) しかしながら、本件違法行為とE、F及びGの視聴料の不払との間の因果関係を直ちに認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠もない。 (ウ) したがって、民法709条の損害をいう原告の主張は、理由がない。 イ 著作権法114条3項の損害 (ア) 原告が、本件番組に係る複製権、頒布権の行使につき受けるべき金銭の額は、前記収録内容、収録時間等を考慮すると、番組1本当たり3000円が相当である。 (イ) したがって、著作権法114条3項の適用により、原告が番組30本分の複製権、頒布権の行使につき受けるべき使用料相当の損害は9万円であると認められる。 (2) 調査費用 ア 継続的監視 (ア) 被告は、請求原因(6)イ(ア)(継続的監視)の事実を明らかに争わないから、これを自白したものとみなす。 (イ) 原告の主張によっても、ヤフーオークションを監視する原告の行為は、本件と同種の侵害行為を発見するために原告の担当者等が日常的に行っていたものと解されるから、継続的監視のための人件費20万円を本件違法行為と相当因果関係のある損害と認めることはできない。 イ 収録内容の確認 (ア) 被告は、請求原因(6)イ(イ)(収録内容の確認)の事実を明らかに争わないから、これを自白したものとみなす。 (イ) 原告が本件ビデオテープに本件番組が収録されているか否かを確認する作業を行うために支出した人件費27万円のうち1人分9万円は、本件違法行為と相当因果関係のある損害であると認められる。 (ウ) しかしながら、その余の2人分の人件費18万円について、本件違法行為と相当因果関係を有することを認めるに足りる特段の事情の立証はないから、収録内容の確認に関する損害のうち、その余の2人分の人件費は本件違法行為と相当因果関係のある損害と認めることはできない。 ウ 出張費用 (ア) 被告は、請求原因(6)イ(ウ)(出張費用)の事実を明らかに争わないから、これを自白したものとみなす。 (イ) 原告の担当者が被告の居住する札幌へ赴き、被告と面談することが、原告の権利行使のために必要不可欠であったことを認めるに足りる証拠はないから、原告の支出した出張費用を本件違法行為と相当因果関係のある損害と認めることはできない。 (3) 弁護士費用 ア 被告は、請求原因(6)ウ(ア)(弁護士費用)の事実を明らかに争わないから、これを自白したものとみなす。 イ 本件における認容額、審理の経緯等の諸般の事情を考慮すると、本件違法行為と相当因果関係のある弁護士費用分の損害額を4万円と認めるのが相当である。 3 結論 よって、本訴請求は、不法行為に基づく損害金合計22万円及びこれに対する不法行為後である平成17年2月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 市川正巳 裁判官 杉浦正樹 裁判官 高嶋卓 |
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